竹刀を構えたまま、お互いに一切動かず試合終了――。実際に行われたこんな剣道の試合が今、ネットで注目を集めている。
竹刀で激しく打ち合う、一般的な剣道のイメージからすると「無気力」にも見えるこの試合。しかし、専門家は「気迫あふれる真剣での斬り合いを想像させる」と称賛する。
剣先をわずかに動かすだけ
16年11月23日に入間市武道館(埼玉県入間市)で行われた入間市剣道大会。地元の選手が一堂に会するこの大会の1試合で、「事件」は起こった。
激突したのは80代と70代の、いずれも7段の高段者だ。激しい打ち合いが繰り広げられるのかと思いきや、2人は試合中、まったくと言ってよいほど動かなかった。試合は結局、そのまま「引き分け」に終わっている。
この模様を撮影した動画がツイッターに投稿されると、
「素人には無気力試合にしか見えない」
「まさかこのまま終わるとは」
といった反応が多く出る一方、
「ハイレベルだ」
との見方も寄せられた。動画で確認できたのは、剣先をわずかに動かす様子だけ。踏み込んだり、竹刀を振り下ろしたりという大きな動きは見られない。人によっては、静止しているように見えるだろう。
これは一体、どういうことなのか。市内の道場を管轄する入間市剣道連盟の荒井恵久会長はJ-CASTニュースの24日の取材に、「良いものを見せてもらったな、という思いです」と振り返る。
目線で火花を散らしていたはず
荒井さんによると、2人は3分間、本当に「ピクリとも動かなかった」という。観客は驚いていたようで、荒井さん自身も「珍しいですよね。私はあのような試合を、今まで一度も見たことがありません」と話す。
一方、
「思うに、真剣を使った立会いでは、ああいうこともあったのではないでしょうか」
と指摘する。
「書物の話になりますが、真剣を持った侍の斬り合いだと、互いにじりじり間合いを詰めて、根負けした側が『参りました』と降参します。剣先をちらつかせながら気迫で争うわけです。今回の試合はそれに近いものがありました。動いてはいませんが、目線で火花を散らしていたはずです。『どこで打つか』というタイミングは、お互いにもう分かりきっていたでしょうから」