通勤や通学で電車を利用している人であれば、毎日のように目にしている「つり革」。その形状に、関東と関西でハッキリとした「地域差」があることがネット上で密かな話題を呼んでいる。
鉄道車両メーカーなどによれば、関東近郊では「三角型」のつり革が圧倒的に主流だが、関西では逆に「丸型」を採用している車両ばかりだという。
「古い車両は丸、新しいのは三角のイメージ」
つり革の地域差が話題になったのは、鉄道や航空などの交通インフラを専門に扱う「乗り物ニュース」が2016年11月13日に配信した記事がきっかけだ。つり革メーカーへの取材を中心に、東日本で西日本では形状に「地域差が見られる」と伝えたものだ。
こうした記事は鉄道ファンを中心に話題を呼び、ネット上には「全然気づいてなかったけど興味深い」との反応が寄せられた。さらに、ツイッターやネット掲示板では、
「古い車両は丸、新しいのは三角のイメージ」
「今時丸とかまだあるんだな」
「吊り手が丸のって、私のイメージの中では昭和時代の電車」
などと、つり革の形状の違いは「車両の新旧にあるのでは?」との反応も目立った。
だが、鉄道車両メーカーの総合車両製作所(横浜市)の担当者は18日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「丸型が古く、三角型が新しいとは一概に言えません。実際、関西では新しい車両であっても丸型を導入するケースがあります」
と話す。一方で、関東の鉄道業者からの受注が多い同社では、「注文のほとんどは三角形のつり革」だという。
関東近郊では三角形のつり革が7割以上
メーカーへの受注数の差だけではなく、実際に運行している車両でも「つり革の地域差」は明確に出ている――。そう明かしたのは、つり革専用の携帯グリップ「GripPon(グリッポン)」を販売している創考テクノ(神奈川県座間市)代表取締役社長だ。
同社は、グリップの開発にあたり三大都市圏を走る全路線の「つり革の形状」を調べたという。その結果について、
「東京など関東近郊では『三角型』のつり革が主流で、確認した範囲では全体の7割以上の車両で採用されていました。ですが、中京地区と関西地区では、圧倒的に『丸型』の割合が多く、三角型はほとんど確認できませんでした」
と社長は説明していた。なお、関東近郊で丸型のつり革を採用しているのは、京急電鉄や小田急電鉄の旧型車両など一部だけだったという。
このように、地域ごとに違いが出たつり革の形状だが、丸型と三角型で機能に差はあるのだろうか。先述の総合車両製作所の担当者は、「どちらが優れているというわけでは決してありません」と話す。
三角型は底が平らなため安定感があるが、丸型は掴む部分がカーブしているので「長くつかんでいると手が疲れてくる」。一方で、乗客の頭にぶつかった際は「丸型よりも、角がある三角型の方が衝撃は大きくなる」など、それぞれの形状にメリット・デメリットがあるそうだ。