「費用対効果」だけでは決まらない
今回、国交省は所要時間短縮で利用者が得られる便益や事業収益などの総便益を建設費などの総費用で割った費用対効果も発表した。この値が1を下回ると投資に見合わないことになるが、舞鶴ルートは0.7、米原ルートは2.2、小浜ルートは1.1となった。費用対効果を見る限り、舞鶴ルートの劣勢は否めない。
しかし、3ルートの沿線人口は舞鶴市が約8.9万人で最も多く、小浜市の約3.1万人、米原市の約4.0万人を上回る。地元自治体は滋賀県が米原ルート、福井県が小浜ルート、京都府が舞鶴ルートを支持しており、三つ巴の格好だ。とりわけ福井県と京都府は「新幹線が開業すれば、舞鶴市や小浜市付近が関西中心部からの通勤圏となり、地域開発効果が高い」と期待する。
整備新幹線は政府系の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)が線路やトンネルなどの施設を建設・保有し、JRに貸し付け、JRが同機構に貸付料を支払う「上下分離方式」となっている。建設費は国が3分の2、地方自治体が3分の1を負担する公共事業で、沿線の住民でなくとも無関心ではいられない。
自民党は費用対効果で劣勢な舞鶴ルートを排除することなく、年内をめどにルートを絞り込む方針だ。しかし、与党PTがルートを絞り込んだとしても、今回の決定は来(17)年度予算には絡まない。このためルートの絞り込みは難航し、調整には時間がかかるとの見方もある。