フィギュアスケートの元五輪女王、キム・ヨナさん(26)が、2015年の韓国「スポーツ英雄」の候補から突然除外されたのは、「影の女帝」とも言われる崔順実(チェ・スンシル)被告の側近らの不興を買ったために受けた報復なのか――。
チェ被告は、朴大統領に極めて近い友人で、職権乱用などの罪で起訴された。韓国政界を揺るがす大事件に、今度はスポーツ界も巻き込む新たな疑惑が浮上し、韓国メディアをにぎわせている。
主導の「ヌルプム体操」イベント欠席で
フィギュアの実績と華麗な容貌から、「国民の妹」と呼ばれるほど人気の高いキムさんは2015年当時、インターネット投票で、「スポーツ英雄」候補12人のうち圧倒的な支持を受けながら、最終選考では、突然持ち出された「年齢制限」で候補から除外された。「スポーツ英雄」は、韓国の五輪委員会(大韓体育会)が選定する。
この背景について、韓国KBSテレビは16年11月19日、チェ被告側近らとの関係を報じた。この側近が主導した「ヌルプム体操」の普及イベント(14年11月)にキムさんを招待したが、キムさんは他の仕事との兼ね合いで断った。このイベントは、朴大統領も参加する大がかりなものだった。
KBSは今回、チェ被告親族の側近証言などから、キムさんはこの「欠席」のため、「目を付けられた」とし、のちに「報復的な被害」を受けたと伝えた。
こうした流れをうけ、チェ被告が影響力を持つ、国の文化体育観光部(省)が大韓体育会に圧力をかけた結果、キムさんが15年の「スポーツ英雄」選考からもれた可能性が指摘されている。
「ヌルプム体操」には多額の政府予算も投入され、チェ被告や側近の利権として利用されたとの指摘が出ている。
国内で大きな反発、16年には「英雄」に
今回の「キムさんへの報復」疑惑は、中央日報(電子版、21日)などもKBS報道に触れながら伝えている。朝鮮日報は21日、キムさん側が「不利益を被ったと考えたことはない」と話した、という他メディア報道を紹介しつつ、「なおも騒動は続くものとみられる」と論評している。
また、聯合ニュースは21日、こうした報道のあおりを受け、14年にキムさんが欠席した問題の体操行事に当時出席した、新体操の人気選手のインスタグラムに対し、キムさんのファンらから非難の声が多く寄せられている状況を伝えている。
キムさんは2010年のバンクーバー五輪で金メダルを獲得。14年のソチ五輪では銀メダルに終わり、同年引退した。15年に「スポーツ英雄」の選からもれた際は、韓国国内で大きな反発が広がった。こうした事もあってか、16年10月に発表された「スポーツ英雄」には、キムさんが選ばれた。
チェ被告の一連の疑惑が報じられ始めたのは、10月下旬だった。