相続税節税「サブリース」に群がる業界 マイナス金利で増えるアパート経営

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   銀行や信用金庫が賃貸住宅を建設・購入するときの個人向け融資、いわゆるアパートローンを増やしている。背景には、相続税の節税効果を狙った個人の借り入れ需要の高まりがある。

   日本銀行の「貸出先別貸出金」によると、2016年9月末の「個人による貸家業」の残高は、銀行と信用金庫の合計で27兆8371億円。前年同期と比べて3.5%増えた。残高ベースでは不動産業向け融資の32.9%、貸出件数ベースでは61.0%を占めている。

  • 背景に相続税の節税対策、銀行のアパートローンが増えている(画像はイメージ)
    背景に相続税の節税対策、銀行のアパートローンが増えている(画像はイメージ)
  • 背景に相続税の節税対策、銀行のアパートローンが増えている(画像はイメージ)

熱心な地方銀行、なかには2ケタの伸びも...

   相続税は、2015年1月に非課税枠が縮小。そのため、相続税の対象となる人が増え、地価の高い都心で土地を所有する人などは節税対策に敏感になった。

   たとえば、通常であれば土地などの評価額は路線価をもとに算出され、そのまま課税されるが、アパートを建てて人に貸すことで、相続税の対象となる土地や建物の評価額を大きく減らせる。アパートローンを組めば、相続税がさらに減ることもある。

   このため、「相続税の節税対策」を売り文句に、高齢者などにアパート経営を勧める不動産事業者らが増えてきたことに加えて、2016年2月に日銀がマイナス金利政策を導入。それにより、超低金利で銀行のローンが組めるようになるなど、個人がアパート経営に乗り出すには、ちょうどよい環境が整っているといえる。企業向け融資が伸び悩んでいるという、銀行側の事情もある。

   日銀が2016年11月16日に発表した「貸出先別貸出金」によると、9月末時点の「個人による貸家業」の残高は、都市銀行や地方銀行など(139行)が前年同期比4.5%増の22兆224億円、信用金庫(265金庫)は0.2%減の5兆8147億円だった。

   3年前の13年9月末と比べれば、銀行で6.6%増、信用金庫で4.9%増えた。ある銀行関係者は、「アパートローンは、とくに貸出先に悩む地方銀行が熱心で、なかには2ケタの伸びをみせている銀行もあります。ここ1、2年の伸びはスゴイですね」と話す。

銀行は労せず融資を伸ばせる仕組み

   とはいえ、そもそも少子高齢化による人口減少や、空き家や空室が増加しているというのに、どうしてアパート経営に乗り出す個人が増えているのだろう――。

   ここ数年、個人、とくに高齢者にアパート経営を熱心に勧めているのが、「サブリース」(転貸し)の仕組みを使っている不動産業者とされる。不動産業者が個人(オーナー)から土地・建物などを、転貸しを目的に一括して借り上げ、運営・管理を引き受ける賃貸システムで、テレビCMでもおなじみの「30年、一括借り上げ」などがそれだ。

   オーナーにとっては、不動産業者が物件を一括管理してくれるので、アパート管理の知識やノウハウがなくても賃貸物件を建築することができ、また部屋を借りる人を探して契約する手間が省け、さらには空室分の家賃収入を保証してもらえるといったメリットが見込める。

   そのため、アパート経営が誰でも簡単に、安心してできると、利用するオーナーが増えているという。

   一方で、トラブルも絶えない。サブリース被害対策弁護団の増田祐一弁護士は、「今年に入って、(サブリースをめぐる)高齢者のトラブルをマスコミが取り上げたこともあってか、相談件数が増えています」という。

   相談の中には、「建築契約を結んでしまったが、考え直したい」「契約を解消したいが、着手金は戻ってくるか」といった契約直後のものや、すでにアパート経営をしている人から、「賃料を減額された」「家賃保証なのに、おかしい」などの相談が寄せられているという。

   増田弁護士によると、「契約のきっかけは、不動産業者の営業担当者による訪問勧誘がほとんどで、個人が自ら進んでアパートを経営しようと、銀行へ相談に行くようなケースは稀です」と話す。

   銀行のアパートローンは、不動産業者と業務提携している銀行が資金を用立てることが多く、不動産業者との契約を結んだ段階でアパートローンが組まれるようになっていている。銀行が労せず融資を伸ばせることも、貸出残高が伸びる背景になっているようだ。

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