国内のタチウオ漁獲量の減少が深刻だ。1967年のピーク時には約6万8000トンを記録していた国内の漁獲量が、最新2015年では7100トンにまで落ち込んだ。消費量の多い韓国への好調な輸出を背景に、国内外の漁業者による乱獲が止まらないことが原因とされる。
韓国でタチウオは「カルチ」と呼ばれ、煮付けや焼き物など様々な調理法で食べられる人気の魚だ。実際、日本一のタチウオ漁獲量を誇る和歌山県有田市でも、「水揚げしたタチウオの8割近くは韓国に輸出しているのが現状」(市水産係)という。
「韓国の方が高い値段で買い取ってくれる」
そもそも、タチウオの漁獲量が大きく減少したのは、国内漁業者の東シナ海での操業が衰退したのが大きな理由だ。水産資源状況の悪化や海外漁船の操業数増を受け、競合を嫌った国内の漁業者が相次いで東シナ海でのタチウオ漁から撤退したのだ。
だが、国内の主な漁場である瀬戸内海の数字だけをみても、タチウオの水揚げ量は減少し続けている。農林水産省が公表している「漁業生産統計」によると、瀬戸内海での2015年度のタチウオ漁獲量は約3900トン。05年度には約9200トンを記録していたが、10年間で半分以下に大きく落ち込んだ。
瀬戸内海でのタチウオ資源が減少している理由について、大分県水産研究指導センター水産研究部の担当者は2016年11月15日の取材に対し、
「韓国への輸出が好調で取引単価が高いため、漁獲高が減少していることが分かっていても漁を止めない業者が多いと考えられます」
と話す。そのほか、環境的な要因からタチウオ稚魚の生存率も「低下している」として、「資源の再生産もできない状況になっている」とも指摘していた。
実際、タチウオの漁獲量日本一を誇る有田市産業振興課水産係の担当者は取材に、「漁獲量は目に見えて減ってきている」と話す。その上で、韓国への輸出は「だいぶ前から続けていた」として、
「韓国の方が高い値段で買い取ってくれるため、水揚げしたタチウオの8割近くは韓国に輸出しているのが現状です」
と話す。そのため、国内では「漁獲量減少の影響があまり出ていないのではないか」と推測していた。