公益財団法人「食の安全・安心財団」(唐木英明理事長)が主催する意見交換会「加工食品の原料原産地表示を考える」が2016年11月10日、東京で開かれた。魚の干物や漬物、ウナギの蒲焼などごく一部の食品での義務づけから始まった「原料原産地表示」が広がりつつある。
しかし、表示食品は自主的なものを含めてもまだ 3割弱にとどまっており、消費者庁は関係者や有識者を集めた検討会を設置し、さらに広げる場合の表示のあり方を議論している。検討会の意見が固まったことから今回の企画になった。
全消連「消費者のためにならない」
基調講演では、吉井巧・消費者庁審議官と、森田満樹・消費生活コンサルタントが、検討会の「中間取りまとめ」案をもとに議論を報告・解説した。 6月の閣議で全加工食品が表示対象となる方向が決まった。原則として、原材料の重量順に原産国を表示する。ただし、原産国が変わるたびに包装を変えるのは負担が大きいとして、例外表示も認めた。
使う可能性がある国をあらかじめ書いたり、 3か国以上の場合は「輸入」とまとめたり、輸入品と国産品を混ぜて使う場合は重量順に「輸入、国産」「国産、輸入」、さらには輸入と国産がひんぱんに入れ替わる場合は「輸入又は国産」と表示する。加工食品の半数近くは、原材料をある程度加工した中間加工品を使っているが、その場合は中間加工品の製造地を表示する。
続いて消費者、農業、食品製造業などの代表が意見を述べた。全国消費者団体連絡会の河野康子・事務局長は「例外表示は正確でなく、偽装や誤認を招き、消費者のためにならない」と指摘した。
同会が発表している意見書では、使用可能性がある複数国が書かれていながら実際はそのうち 1国だけもあるし、世界中どこの材料でも「輸入、国産」と書ける。中間加工品を輸入して味付けするだけで「国内加工」になる。現在は、中国産梅干しは「梅 (中国) 」の表記だが、検討会案では「梅 (中国又は国産) 」、「梅 (輸入、国産) 」、「梅肉 (国内加工) 」いずれもがありうる、という。輸入材料なのに国産と誤認されやすい表記が増えそうだ。
消費者庁は検討会の中間取りまとめ案をもとに表示案を作り、広く国民から意見を求める。会場からは「圧倒的多数が反対意見だった場合に消費者庁はどうするのか」との厳しい質問も出た。唐木理事長は「政治が全加工食品を対象としたことが問題で、見直すことも必要」と会を締めくくった。(医療ジャーナリスト・田辺功)