「ヌードル・ハラスメント」(ヌーハラ)といった新語が独り歩きしている。ヌードルは蕎麦やラーメンなどの麺で、ハラスメントは人を困らせる事、嫌がらせといった意味だ。外国人には麺をすするといった習慣がないため、すする音を聞かせて不快な思いをさせないよう、音を立てずに食べるべきだ、という主張が裏にはある。
これについてネット上では、日本の伝統的な食べ方であり、すすることで美味くなるよう調理されているわけだからハラスメントには当たらない、と大反発が起きている。
スエーデンから来た老夫婦は「ブタよ!」
「ヌーハラ」という言葉が広がったのはこんなツイッターでのつぶやきからだと言われている。「世界が激怒する日本の『ヌーハラ』」というタイトルで、
「欧米では音を立てずに食事することを子供の頃からしつけられてます。しかし日本では『ズズーズ』と野生動物のように音を立てて食べることを強制されます。それが欧米人からすれば差別以外の何物でもありません」
「2020年のオリンピックに向けて一刻も早くこの『ヌーハラ』を地上から撲滅するべしです。まずは『世界的に正しい麺類の食べ方』を日本政府が啓蒙して日本人の意識改革をすすめることが早急の課題なのです」(編集部で一部修正)
などと2016年10月中旬から主張が始まり、まとめサイトも登場した。
16年11月16日には、フジテレビ系情報番組「とくダネ!」で、「日本人VS外国人『ヌーハラ』論争」という大特集を放送し、この言葉を一気に全国的に広めた。蕎麦やラーメンをすする音はほとんどの外国人にとって耐えられないほどの不快な音だとし、番組スタッフがラーメンを食べる映像と音を外国人観光客に見せると、スウェーデンから来た老夫婦は「ブタよ!」と一喝した。エストニアの男性は、「音を出して食べたら、幼稚園で、ちゃんとした教育を受けてないと言われるよ」と語った。イタリア人の彼氏がいる日本人女性は音を立てて麺を食べる事をやめた。それは彼氏から「隣の部屋に行って食べてくれ」と言われたからだとした。
どうしてこうなるのかについて東京工芸大学工学部メディア画像学科の森山剛准教授は、ヨーロッパの人は食事中にあのような音を聞いたことがないため、自分の知っている音に当てはめようとするからだ、と番組内で説明した。
自国の風俗習慣を「殺す」たくらみとしか思えない
今や外国人観光客が年間で2000万人を超える日本。日本人はどう対応したらいいのか。
スタジオ内ではコメンテーターたちから、こうした指摘に批判的な意見が相次いだ。「そもそも日本には茶道など伝統文化に『すする』という作法があり、落語でもよく使われる」「味噌汁など熱い飲み物を飲む際には温度を下げるという効果がある」「ラーメンは麺とスープが絡み美味しくなる」「日本蕎麦はすすらないと蕎麦の香りが鼻に入らない」などといったもので、デーブ・スペクターさんは自分はすすらないけれども、
「日本の食文化だから、外国人に配慮するのは間違っているし、遠慮するのはやめたほうがいい」
と語った。さらに、司会の小倉智昭さんは、
「外国人にとやかく言われる筋合いはない。それだったら(外国人は)ラーメン屋、蕎麦屋に入るな!おもてなしで、どんどん音をたててやる」
とまくしたてる一幕もあった。
「ヌーハラ報道」が増えるにつれ、ネット上でも、そもそも「ヌーハラ」というものが実際に存在しているかも分からない、といった意見とともに、「ヌーハラ」騒動に対する批判が増え始めた。このような言葉を流行らせようとしている人たちには、何か日本に対する悪意を感じるとし、ネットの掲示板には、
「おもてなしを一方的に外国人サマへの譲歩と捉えている向きがある。自国の風俗習慣を『殺す』たくらみとしか思えない」
「なんでもかんでも外人に配慮配慮ってうぜーんだよ、ここは誰のための国だよ」
「こういうことが話題になるのは日本だけだろ。よその国で、外国人観光客が不快な思いをするから昔からある伝統を変えようなんて話が出ることがあるか?」
「外国人に対して ソバの『伝統的な食べ方』を教えるのが 正しいおもてなしの心だろ」
などといった書き込みが並んでいる。