朴槿恵大統領の政治スキャンダルに揺れる韓国で、にわかに注目を集めているドラマがある。2014年に韓国で放送された連続ドラマ「密会」だ。日本でもBSジャパン(15年)とテレビ大阪(16年)で放送されている。
韓国の音楽大学を舞台に、20歳の天才青年ピアニストと40歳の美しき女性指導教官の不倫愛を描いた大人のラブストーリーなのだが、今回の国政介入疑惑騒動「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」と重なる点が数多く散りばめられ、事実を知っていて作られたのではないか、などと大きな話題になっている。
チェ氏の娘と同姓同名役の女性が「裏口入学」
同ドラマには、名門音楽大に「裏口入学」する女性が登場する。ブランド品に身を包んだお嬢様で、名前はチョン・ユラ。――チェ氏(60)の娘、チョン・ユラ氏(20)と同姓同名だ。そして現実の彼女も母親の介在を通じた名門・梨花女子大学への裏口入学疑惑が取り沙汰されている。
では、母であるチェ氏はどうだろうか。ドラマ中のチョン・ユラの母親は「投資アドバイスをする占い師」という役柄である。音大を運営する文化・芸術系の振興財団に不正蓄財を指南するが、その後、財団に検察の強制捜査が入ると母娘で海外に逃亡する。
現実のチェ氏は占い師ではないが、父のチェ・テミン氏は新興宗教団体「大韓救国宣教会」の創設者として知られる。また、チェ氏自身は親友である朴大統領にさまざまな助言を行っていた。
ドラマ中の「財団」というキーワードも騒動を連想させる。チェ氏は文化支援財団「ミル財団」とスポーツ支援財団「Kスポーツ財団」という2財団の設立を主導し、これを私物化していたとされるためだ。ソウル中央地検は2016年10月26日の時点で両財団の捜査に乗り出している。ドラマの流れとは前後するが、チェ氏と娘は問題が大きくなる前の9月に韓国を出国し、ドイツなどに滞在していた。
脚本家は「偶然の一致」
さらにドラマには、チェ氏の愛人で側近だったとされる元ホスト、コ・ヨンテ氏(40)を彷彿させる人物も出てくる。ドラマでの役柄はあるホストクラブのホストで、ヒロイン女性の女上司と愛人関係になり、アパレル会社の設立を画策する。
現実のコ・ヨンテ氏はチェ氏の資金援助をもとにバッグブランドを立ち上げている。朴大統領も就任初期にはこのブランドのバッグを持ち歩いていたと指摘されている。ドラマ中のお相手こそ「投資アドバイスをする占い師」ではないものの、その後の行動には重なる部分がある。
奇妙な一致はまだある。朴大統領の血液検査をチェ氏の名前で行っていたことなどが問題化している「チャウム医院」の看板とそっくりなものが登場するのだ。ドラマ中では登場人物たちがその前を通り過ぎるだけなのだが、画面に映ったその看板はスペルだけでなく、ロゴの形まで瓜二つだった。
そして、このドラマを製作したのが、今回の疑惑を最初にスクープしたケーブルテレビ局「JTBC」とあって、「密会」制作の経緯にひときわ注目が集まることになった。
現地の報道によると、ドラマの脚本家は、これまた偶然にも梨花女子大出身だという。そのためチョン・ユラ氏の裏口入学疑惑の背景等を知っていたのではないか、といった声も上がっているが、脚本家は「偶然の一致」だとしている。
しかし、あまりに多くの共通点はさまざまな憶測を呼び、日本でも複数のワイドショーが取り上げている。