スマートフォン(スマホ)に残っている汚れや手垢、脂などから持ち主の詳細なライフスタイルを突きとめる研究を米カリフォルニア大学のチームがまとめ、2016年11月14日、「米国科学アカデミー紀要」(電子版)の2016年11月14日号に発表した。
将来、犯罪捜査のプロファイリング(犯人像特定のための資料集め)や空港での保安検査に役立つという。AFP通信やウォール・ストリート・ジャーナル紙など海外メディアが報道した。
持ち主の持病や年収、どんな酒が好きかまでわかる
論文によると、研究チームは実験に協力した39人のスマホから付着物を採取した。また、右手の指や手のひらからも皮膚の断片や皮脂など様々なサンプルを採取、合わせて分析した。その結果、スマホを持ったり、操作したりした時に残された分子や微生物などの痕跡から様々なことがわかった。たとえば、次のようなことだ。
(1)性別のほか、検出された薬剤(脱毛治療薬、抗うつ薬、抗炎症薬など)や付着していた病原菌から持病がわかる。
(2)使っている化粧品や染髪剤が高級かどうかで経済状態が推測でき、日焼け止めクリーム、虫よけ剤などからアウトドア派かどうか生活スタイルがわかる。虫よけ剤は数か月経っても残り、数か月前に訪れた場所を推測できる。
(3)カフェイン、アルコール類などの痕跡から、コーヒーを飲んでいるか、ワインよりビールが好きか、コショウやトウガラシの痕跡から食生活が推測できる。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙の取材に対し、研究リーダーのピーター・ドレスティン博士は「私たちはスマホに付着した化学物質の分析から持ち主を90%正確に特定できました。この研究を応用すれば、現場に残されたスマホが犯罪捜査で指紋代わりに利用できるようになるかもしれません」と語っている。なお、今回の研究は米司法省の資金援助を受けている。