年金改革めぐる新聞社説バトル 「的外れの主張」はどちらの陣営?

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   年金支給額を抑える新たなルールが盛り込まれた年金改革法案の行方が混とんとしている。開会中の臨時国会で環太平洋経済連携協定(TPP)承認案と並ぶ与野党対決法案として2016年11月1日、衆院本会議で審議入り。政府・与党は30日までの会期内成立を目指し、今月中旬に衆院を通過させる方針だが、野党は対決色を強めており、「成立は会期延長の幅次第」との声が与党関係者からも聞こえている。

   年金の現行制度は、2004年の年金改革が基礎になっている。保険料に上限(厚生年金は年収の18.3%)を設け、18年度以降は引き上げない「保険料固定方式」とした。この大枠を維持するための支給抑制策が「マクロ経済スライド」。そもそも、年金は賃金や物価に連動する「賃金・物価スライド」だが、少子高齢化が進む中、それだけでは年金給付の総額は現役世代が支えきれないほど膨らんでしまうため、年金の伸び幅を毎年1%程度抑えるもの。43年度の終了が想定されている。

  • 新聞各社で意見が分かれる
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賃金・物価スライドの強化

   しかし、マクロ経済スライドは物価下落時には適用しないため、2015年度の1回しか発動していない。そこで、これを強化しようというのが今回の法案の第1の柱だ。具体的には、18年度から物価下落時にもマクロ経済スライドを適用する。ただし、高齢者の生活に配慮し、物価下落時には引き下げ分を繰り越し、後で物価が上昇した時にまとめて適用する。

   法案のもう1つの柱が賃金・物価スライドの強化だ。今は物価が上がり賃金が下がった場合は年金額を据え置くが、今回の改正で、賃金に合わせて下げる。また、物価も賃金もマイナスの場合、今は物価に合わせているが、新ルールでは、賃金の下げ幅が大きければ賃金に合わせるよう改める。現役の保険料をお年寄りの年金に回す「仕送り方式」が現在の制度であり、賃金は現役世代の年金を支える力を示すのだから、賃金と年金の連動性を強めるという考えだ。

   法案について、自民党が「将来の年金水準確保法案」と訴え、民進党は「年金カット法案」と批判し、議論は目下のところ噛み合っていない。

   全国紙も社説(産経は「主張」)で取り上げている。全国民にかかわり、かつ、利害も錯綜する難題であるだけに、共通するのは、冷静、建設的な議論を求めるといった言い回しだ。「国会では、世代間のバランスを踏まえた本質的な議論を期待したい」(日経10月24日)、「国民に受けのよい話だけを進め、厳しい改革から逃げるような姿勢は、責任ある政治の姿とは言いがたい。将来世代にも目を向け、審議を進めてほしい」(朝日、31日)、「適正なデータに基づき、丁寧でわかりやすい論議が必要だ」(毎日31日」、「年金を『政争の具』とせず、建設的な議論を展開することが重要だ」(読売11月6日)、「最も避けるべきは世代間対立をあおることだ。将来を見据えた冷静な国会論戦が必要である」(産経7日)といった具合だ。

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