43歳のとき、乳がん検診で「乳腺の密度が濃い」との診断を受け、医師から「バイオプシー」(針生検)の受診を勧められました。体内に針を入れて組織を採取し調べる検査です。
悩んだ挙句、私は針生検を見送る決断を下しました。「半年後の超音波検査とマンモグラフィーで異常が見つかったら受けよう」と考えたのです。その間にもしもがんになったら、そのときは自分の判断ミスだと覚悟しました。
セカンドオピニオンを聞くチャンス
幸いにも6か月ごとの検査を2回受けた後に、「気になる箇所の形に変化が見られないので、1年に1度の定期検診に戻っていいわよ」と言われました。もしこれががんであれば、異変が現れるのです。
「年1回の検診で済む」とやっとひと安心。心の中で「我が家はがんの家系ではないから大丈夫」と思っていても、検査結果が毎回問題なかったとしても、やはり医者からお墨付きをもらうまでは、ふとした時に、「乳がんになったらどうしよう」という思いが頭をよぎりました。
さて1年後。定期乳がん検査をうけたところ、なんと再び、「Your breast tissue is dense」との結果が出ました。そして前回同様、6か月毎の検査を指示されました。さすがに今回は「またなの?」。セカンドオピニオンを受けることも真剣に考えました。ただ婦人科主治医指定ではない検査医のところで受診して、違う検査結果がでた場合、主治医にそれを説明するのも面倒だと思い、再度6か月後に検査してその結果次第で決めることにしました。
ところが検査から数か月後、婦人科主治医から退職するとの連絡が届きました。さらに主人の転職に伴い、加入していた医療保険が変わり、これまでのかかりつけの婦人科医、検査医、内科主治医で新しい保険が全く使えないようになったため、全て変更せざるを得なくなりました。
「これはセカンドオピニオンを聞くにはちょうどいい機会だ」と考えて、すぐに新しい内科主治医を決め、定期健康診断の際に、「実は乳がん検査にひっかかって、前の主治医に半年ごとの検査をするよう指示されている」と相談しました。すると「それはすぐに検査しなければなりません。前の検査医からのデータも取り寄せましょう」と、新しい乳がん検査医を紹介してくれました。
40歳過ぎるとママ友たちから「乳がんになった」
さて検査です。今回はマンモグラフィーはなく、疑わしい箇所の超音波検査だけとなりました。結果は「問題ない」。次からは1年に1度の検査で構わないと言われました。
検査医から結果を聞いた内科主治医からは、こう説明を受けました。
「前の検査医が慎重すぎたのでしょう。検査結果は全く問題ありません。それに今回あなたを診た医者は、この辺りで最も信頼されています。彼が言うのだから大丈夫でしょう」
後日、改めて検査医から「以前撮影されたあなたの検査写真と今回撮った写真を比べてみましたが、がんと見受けられるものはありませんでした」という手紙も届きました。
約3年にわたる私の乳がん疑惑。やっと決着がついたときは心の底からほっとしました。
40歳をすぎると突然、まわりのママ友たちに「乳がんになった」という話をよく聞くようになりました。
米国での日本人ママ友2人はがんのみならず、乳房も切除、再建し、今は元気にすごしています。うち1人は女優のアンジェリーナ・ジョリー同様、将来的な転移を避けるために、乳房だけでなく子宮も取りました。その彼女は「放射線治療はつらい」とこぼしながらも、、「(米国の)形成外科医って男の医師が多いのよ。おまけに医師によって好みの乳房の形が違うらしいの!私は自然の形がいいのに、米国人はせっかくだから胸を大きくして再建という人が多いのだって」と、会うといつも明るくおもしろい話をしてくれました。
1年前、私の大腸がん検査を担当した別の専門医から、「更年期障害になった女性が症状緩和のために女性ホルモン系のサプリや薬を服用することが多いけれど、乳がん検査で一度問題があったなら気をつけたほうがいいかもしれないね。女性ホルモンが増えるとこれまでおとなしくしていた症状が悪化することがあるのですよ」とアドバイスを受けました。
気をつけなければならないことは多いですね。
ただこれからも面倒だと考えず、年に一度の乳がん検診と子宮がん検診は欠かさず受けていこうと思います。
=おわり= (米国在住ライター・北雨利香)