みずほフィナンシャルグループ(FG)が進めている、旧来のシステムを統合した新たな勘定系システムの完成が、予定していた2016年12月から数か月程度遅れる見通しであることがわかった。同社の佐藤康博社長が、11月14日の9月中間決算の記者会見で明らかにした。
みずほ銀行のシステム統合の延期発表は、2014年に続き2度目。16年3月の完成予定が9か月間遅れる、としていた。システムが完成しても、その後の移行作業には約1年半かかるとされ、今回の遅れで、運用開始は2018年夏以降になりそうだ。
「現代のサグラダファミリアやぞ」
みずほ銀行のシステム統合が、数か月とはいえ「延期」されると聞いて、「またか」と思った人は少なくないようだ。
三菱UFJ・FGと三井住友FGの他のメガバンクがとうにシステム統合を終えているなか、みずほFGだけが発足から15年経っても統合を終えていない。
インターネットには、
「無理なのは皆わかってるwww」
「数か月で済むわけないやろ。だいたいホンマにできるんか」
「そんでもって動きはじめたら、また止まる」
「テスト、テスト... 賽の河原で石を積む仕事だな」
「新システムは富士通、日立、IBMに分割発注してんだよね。。。ようは取り仕切るベンダがいないてことね?」
「現代のサグラダファミリアやぞ」
といった声が寄せられる。
なにやら、不信感が漂っているかのようだ。
みずほ銀行にとってシステム統合は「鬼門」だ。同行はこれまで、2002年と2011年の2度にわたり、ATMの取引停止や口座振り替えの遅延などの大規模なシステム障害を起こした。そのたびに金融庁から業務改善命令を受けていて、それが経営陣に重くのしかかっている。
2度の大規模トラブルが「トラウマ」に?
最初のシステム障害は2002年4月。富士銀行と第一勧業銀行、日本興業銀行の3行の経営統合で、「旧みずほ銀行」と「みずほコーポレート銀行(CB)」が誕生したなかで発生した。当時のみずほ銀行は、富士銀行と第一勧業銀行のシステムを、第一勧銀のシステムに一本化しようとした。ところが、旧3行が自行のシステムを使うことを主張したことで準備不足に陥ったことがトラブルの原因とされた。復旧には1か月近くかかった。
2度目は2011年3月の東日本大震災の発生からわずか3日後の14日。義援金の集まり過ぎをきっかけに、ATMがストップ。振り込み不能や店舗でのサービスが停止した。収束までに10日間を要し、時期が時期だっただけに経営責任を問う声が高まり、西堀利頭取ら経営陣が引責辞任した。
こうしたトラブルの背景として指摘されていたのが「旧3行の縄張り意識」。それが組織内の連携を妨げているとの見方は、いまも根強い。
一方、旧みずほ銀行と旧みずほコーポレート銀行(CB)が合併して、新「みずほ銀行」が発足したのが2013年7月。ただ、システムは旧みずほ銀行(旧第一勧銀)と旧みずほCB(旧興銀)の2系統を現在も併用している。そうしたのも、2度のシステム障害で、「3度目は許されない」と経営陣が神経質になっているためとみられる。
現在開発中のシステムは、業務の基幹となる「勘定系システム」で、みずほ銀行(旧第一勧銀と旧興銀)と、みずほ信託銀行の3つのシステムを統合する。つまり、システム統合の総仕上げ。統合作業は「山場」にかかっているというわけだ。
「安全確保に万全を期すため」と説明
みずほFGの佐藤社長は2016年11月14日の会見で、システム統合を延期する理由を、「安全確保に万全を期すため」と、強調した。
みずほ銀行によると、今回のシステム統合の延期について、「とくに、どの業務分野の開発が遅れているということではありません。新システムの完成に向けて、いわば『品質確認』のテストを繰り返しているところですが、そこで見つかった不具合を調整していき、またテストを繰り返していく、その作業を進めています」と説明する。
システム開発では、同社に限らず、システムエンジニアなどの人手不足が指摘されており、スケジュール自体の遅れも懸念されるが、「そのようなことはありません」という。
「数か月」という延期で、3000億円超とされる投資額が増える可能性があるが、みずほFGの佐藤社長は、「100%大丈夫という開発に至るまで、時間を少し先延ばしする」とも語った。