脳信号を無線で送信する装置を使い、脊髄を損傷したサルが麻痺状態の足を動かすことに成功した。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校などの国際共同チームが研究をまとめ、英科学誌「ネイチャー」(電子版)の2016年11月9日号に発表した。脊髄損傷患者への治療に期待が高まっている。
ネイチャーが発表したプレスリリースによると、研究チームは「神経機能代替インターフェース」と呼ばれる脳に埋め込む機器を製作した。主要な部品は米ブラウン大学とアイルランドの医療機器メーカー、メドトロニック社が共同で開発した。インターフェースは、サルの脳と脊椎を多くの回路を使ってつなぐコネクター(接続器)で、足の動きをつかさどる脳の運動皮質からの様々な信号をキャッチする。
実験には脊髄が損傷している2匹のサルが使われた。脳から出た「足を動かせ」という指令が、精髄の損傷部分で遮断されるため、下半身に伝わらず足を動かすことができない。しかし、インターフェースが脳からの指令を無線中継し、損傷部分を飛び越え足の筋肉神経に伝えると、2匹のサルはトレッドミルと地面の両方を歩けるようになった。
論文を報道したAFP通信の取材に対し、研究リーダーのグレゴワール・クルティーヌ氏は「人間への臨床試験にはまだ数年が必要ですが、完全に麻痺した患者が足を動かす姿をイメージすることができるようになりました」と語っている。