「高付加価値で差別化」戦略が裏目に
日本勢の戦略ミスも大きく響いた。低コストを武器に00年代に台頭した中国・韓国勢に対抗するため、大型客船や海洋資源開発船など高付加価値の船で差別化を図ろうとしたが、技術やノウハウ面で壁に突き当たり、巨額の損失を計上する羽目になった。
窮地に追い込まれた業界に打開策はあるのか。三菱重工は、大型客船建造からの撤退に加え、今治造船(愛媛県今治市)、名村造船所(大阪市)、大島造船所(長崎県西海市)と進めている提携協議を加速させる。今後、三菱重工が技術力を生かして設計を担い、コスト競争力のある造船専業3社が建造を行うなど、協業を強化する方針だ。造船業界では「4社が本気になって連携すれば手強い」(他社幹部)と警戒する声も上がっている。
川崎重工、IHIも17年3月末までに具体的な構造改革方針を出す予定だ。川崎重工と三井造船は過去に経営統合を模索したが、13年に破談となった経緯がある。厳しい造船不況の中、再び他社との提携を模索する可能性もありそうだ。
ただ、再編して国際競争力を取り戻すには、国内の造船所の閉鎖・統合が避けられないとみられ、下請けも含めて大規模な雇用が失われる恐れがある。日本の造船業界がかつてのような輝きを取り戻す道は険しい。