学校トイレ「和式は全廃しろ」 そんな議論の問題点とは

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   「いいトイレの日」にあたる2016年11月10日、文部科学省が公立小中学校の「トイレ事情」に関する調査結果を発表した。同省が初めて実施した全国調査で分かったのは、学校のトイレの6割近くが「和式便器」という状況だ。

   こうした調査結果を受け、ネット上では和式を廃止して「洋式に統一すべき」との意見が噴出。一方、トイレ事情に詳しい専門家は「洋式だから良いというわけではない」として、「和式を全て排除することは問題だ」と指摘する。

  • 和式トイレ「廃止論」に専門家は…(画像はイメージ)
    和式トイレ「廃止論」に専門家は…(画像はイメージ)
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和式が6割弱、の調査結果

   今回の調査は、国内にある全ての公立小中学校約2万9000校を対象に行われた。その結果、校舎や体育館にあるトイレの便器は計約140万基(数字はいずれも4月1日時点)。そのうち、和式便器は約79万基(56.7%)、洋式便器は約61万基(43.3%)だった。

   調査を実施した理由について、文科省文教施設企画部の広報担当者は11月11日のJ-CASTニュースの取材に対し、「4月の熊本地震で、改めて学校のトイレの実状が浮き彫りになったことが一因です」と話す。

   災害時に地域の避難所として使用される学校施設。その際には、児童・生徒だけではなく一般の人も学校のトイレを利用する。上述の担当者によると、多くの小中学校が避難所となった熊本地震の際には、

「和式が空いているにも関わらず、洋式に行列ができる場面もみられた」

という。

   その上で、学校のトイレに「3K」(暗い、汚い、臭い)のイメージがあることは「よく聞く話です」とも言及。全国の自治体から学校のトイレの環境改善を求める声が出ていることもあり、「全国的な調査に踏み切った」と説明した。

   今回の調査で、洋式化率が最も高かったのは神奈川県で58.4%。一方、最も低かった山口県は26.7%だった。

   こうした「トイレ格差」が発生する理由について、上述の担当者は「耐震化工事の進展度合いが関係している」と説明する。老朽化が進んでいる小中学校では、トイレなどの環境改善よりも「耐震工事」に集中して予算を投入するためだ。

   実際、洋式化率の低かった山口県では校舎の耐震化率は94.1%。12年の調査では45.5%だったことからも、多くの予算を耐震工事に割いていることが分かる。一方、東海地震エリアにあたる神奈川県は、12年のデータでも90%の校舎が耐震化済みだった。

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