タレント・関根麻里さん(32)は、もうすぐ1歳になる長女がいずれは3言語を話せる「トライリンガル」になることを望んでいる。
グローバルな教育方針だと思えるが、そう簡単ではないかもしれない。夫婦がそれぞれ複数の言語を話す場合、「子どもに何語を話させるか」で戸惑う場合があるようだ。
現在「家では日本語」で育てている
関根さんは2016年11月9日、都内で開かれたイベントで、1年前に生まれた長女の育児に話が及んだ。関根さんは米国の大学を卒業しており、英語が堪能。夫は日本で活躍する韓国人歌手で、日本語歌詞の曲は数多い。国際結婚のバイリンガル夫婦とあって、家ではどの言葉で会話をしているのかと報道陣から質問が出た。
関根さんは「娘は私を何となく『マ、マ』と呼んでくれる程度で、まだしっかりとは話せない。家ではみんな日本語で話していて、娘はそれを聞いて育っています」とした後、
「あとは韓国語と英語を話せるようになってくれればいいなと思いますね」
と、将来はトライリンガルになるのを望んでいるようだ。
夫婦がそれぞれ複数の言語を話せる場合、子どもにどれを覚えさせるかは悩みの種になりやすそうだ。
女性向け掲示板サイト「発言小町」には11年12月7日、1歳の娘がいるというスペイン語圏在住の日本人女性が、子どもの言語環境について相談した。女性は日本語と英語にスペイン語、夫のスペイン人は英語とスペイン語を話し、夫婦間では英語かスペイン語で会話する。一方で女性は「娘には日本語を理解してほしいので日本語で話しかけるようにしています」としつつ、1日に接する時間が3、4時間程度のため「やはり限りがあります」。中途半端に覚えさせるくらいなら言語を絞るべきか、それとも3か国語を話せる環境をしっかり整えるべきか、と悩んでいる。
この投稿には、同じような家庭環境で子育てをしてきたというユーザー10人以上が意見を寄せた。ある回答者は「投稿者が日本語で話しかけ、学校は英語主体のところへ通わせる。スペイン語は生活の中で自然に覚えさせる」と、言語ごとに環境を整えて覚えさせるよう勧めた。一方、
「同じ人がいくつかの言語で話しかけると赤ちゃんが混乱して言語が混じる」
として、子どもに話しかける時は「1人1言語」を徹底するよう促す回答もあった。
どの言語も中途半端な「セミリンガル」
その「混乱」の一例とも言えそうな事例がある。ネットメディア「レアリゼ」の09年11月12日付の記事「多言語状況における言語習得の問題」では、国際結婚夫婦の言語教育を複数紹介。その一つ、米国在住の日本人妻、ドイツ人夫の間の3歳の息子は、
「家では『ドイツ語』と『日本語』、幼稚園では『英語』を聞いたり使ったりしているうちに、全ての言葉について全く意味のない文節を話すようになってしまい、父親(ドイツ語)と母親(日本語)とスクールカウンセラー(英語)の3人が聞いても全く理解できない言葉の使い方をするようになってしまった」
という。
日本小児科学会専門医の小野博氏は著書『バイリンガルの科学 どうすればなれるのか?』(講談社)の中で、母語の基礎を確立されないまま複数の言語に触れさせると、どの言語も中途半端な「セミリンガル」になるおそれがある、と主張している。
ただ、関根家では先述の通り、現在のところ「家では日本語のみ」を守っている。これなら、娘が言語で混乱する心配はないだろう。