ペットの手術に必要な血液の不足が深刻な問題になっているが、中央大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の合同チームは2016年11月11日、イヌの輸血用人工血液の合成に成功したと発表した。
長期保存が可能で、血液型に関係なく使え、5年後の製品化を目指す。研究論文は2016年11月10日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。
中央大学とJAXAが発表した資料によると、日本では、動物医療における広域で利用が可能な献血システム(血液バンク)が存在しないため、重症のペットの手術用に血液を確保することが難しいのが実情だ。輸血が必要なイヌやネコには獣医自身がドナーを準備しなければならず、大きな動物病院の中には院内に供血用のイヌやネコを飼っているところが少なくない。ウシの血液を使った製剤があるが、副作用の心配がある。
研究チームは遺伝子組み換え技術を使い、ウシのヘモグロビン(赤血球の中の酸素を運ぶタンパク質)をイヌの血清タンパク質で包み込む形の分子の合成に成功した。この「合成血液」を実際にイヌに投与したところ、安全性に問題はなかった。「合成血液」は大量に作ることが可能で、研究チームでは「ペット医療の分野の深刻な輸血血液確保の問題を解決する画期的な発明です」と意気込んでいる。