「米国で、こんなに怒りや不満を抱え、『疎外』されていた人が多かったのか、と驚くばかりである」。大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利が決まってから1夜明けた2016年11月10日、読売新聞朝刊の1面コラムはそんな書き出しで始まった。国際部長の署名入りで、「大衆迎合で大国導けぬ」という見出し(東京最終版)だった。
その読売新聞国際部が編纂し、刊行予定だった新刊書『ヒラリー、女性大統領の登場』(中央公論新社)が、大統領選の投開票日(日本時間8~9日)より数日前から、複数のインターネット書店のホームページに掲載・告知されていた。「大統領選の投開票は終わっていないのに、どうして」とツイッターなどに疑問の声が殺到。告知はすでに削除されている。
「米国初の女性大統領として登場したクリントン・ヒラリー」
「幻」の新刊書『ヒラリー、女性大統領の登場』は、インターネット通販サイト「Amazon」や電子書店「honto」の「honto本の通販ストア」に掲載された。まだ大統領選の投開票が始まる前のことだ。掲載情報によると12月19日発売予定で、価格は1512円(税込み)。商品説明欄(現在は削除済み)には、
「2016年アメリカ大統領選挙はまれに見る劇場型選挙であった。それを勝ち抜いて米国初の女性大統領として登場したクリントン・ヒラリー。本書は刺戟と混乱に満ちた新大統領登場のドラマを徹底取材によって描出する」
と書かれていた。その上で、「日本のメディアではNHKと読売だけが許可されている『クリントン・プール』といわれる同行取材の成果をふんだんに織り込んでいる」ため、「重要な局面や日常的場面でのヒラリーの生の声もふんだんに盛り込んでいる」と説明。さらに、
「本書は、多様な情報をもとにヒラリー新政権の今後の人事動向や対日政策も分析しており、まさに決定版である」
ともうたっている。