今年のプロ野球を締める日本ハム-広島の日本シリーズは予想外の人気で驚いた。「人気は戻った」と喜ぶ球界関係者も多い。その実態は...。
テレビの視聴率が驚きの根拠である。決着がついた最終第6戦は、関東地区で25%を超えたという。
「投打二刀流」と「男気」の勝負
「驚異的な数字。公式戦で2ケタ視聴率はまずなかったから」
メディア関係者はそう言って首をひねった。信じられない、というのだ。第1戦から視聴率は高かったが、最後まで落ちなかった。
今シーズンのカードは、一昔前ならB級カードだった。しかも札幌、広島と地方のチーム同士の対戦。花のお江戸の最大人気チーム、巨人が出なければ視聴率は取れなかったからである。
このカードだが、なぜ注目されたのだろうか。
日本ハムには「投打二刀流」の大谷翔平、広島には「男気」の黒田博樹がいたことが大きい。大谷はパ・リーグ優勝を決める最終盤で165キロを出し、黒田は日本シリーズ開幕直前で「今期限りで引退」を発表。これほどの宣伝効果はなかったと思う。
このころ世間では2020年東京五輪を巡り、競技会場の問題でもめていた。それも「税金にむしゃぶりつく」醜い言い合いが連日報道され、スポーツファンがうんざりしていた。
その反動がプロ野球に向いたのではないか、と見ている。
勝っても負けてもスカッとした結末
確かに、日本シリーズは接戦が多く、ドラマチックな展開が多かった。広島2連勝のあと日本ハム4連勝もすごかったが、サヨナラ満塁本塁打あり、優勝が決まった試合でも満塁ホームランが飛び出した。
つまり勝っても負けてもスカッとした結末で、プロ野球ならではの醍醐味に満ちあふれていたのである。
日本シリーズの常連だった巨人は静かに戦力の立て直しに必死だった。日本一の日本ハムとのトレードを行い、かつてのMVP投手を獲得したのはその現れだった。
今年の日本シリーズの結果を冷静に見ると、プロ野球に新しい時代がやってきたといえる気がするのだ。巨人や阪神、それに西武が勝たなくても十分採算が取れる業界になったということである。
安倍政権の「地方創生」政策を先取りしているともいえる。来年のメディアが「プロ野球は商売になる」と思いを改めるのかどうか、その取り組みに注目したい。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)