福岡市のJR博多駅前で2016年11月8日朝に起きた大規模な道路陥没事故。オフィスビルが立ち並ぶ繁華街に面した道路が「ぱっかりと割れた」現場の状況には、インターネット上で「陥没なんてありえない」「信じられない事故」との驚きが広がっている。
だが、道路などの陥没事故は全国各地で続発しているのが現実だ。国土交通省によれば、下水道管が原因で起きた陥没事故は、14年度だけでも約3300件起きている。その大半は小規模な陥没だというが、専門家は車両事故につながる可能性もあると指摘する。
「とても日本の光景とは思えない」という反応もあるが...
福岡市交通局の発表によれば、陥没の規模は幅約27メートル、長さ約30メートル、深さ約15メートル。陥没の瞬間を捉えた映像をみると、道路上に設置されていた信号機や標識が倒れ、地下を通っていた水道管が露わになり水が噴き出すなど、生々しい事故の様子が分かる。
福岡市交通局建設課によれば、陥没事故による負傷者はゼロ。だが、電気や水道などのインフラや交通に大きな被害が出ており、完全復旧の時期も「未定」という。陥没が発生した原因については、「市営地下鉄七隈線の延伸工事に伴うもの」としている。
こうした陥没事故をめぐり、ネット上には「信じられない」と驚く声が相次いだ。ツイッターなどには、
「陥没なんて普通ありえない」
「とても日本の光景とは思えない」
「先進国で起こるような事故じゃない」
といった声が数多く見つかる。
確かに、今回のように大規模な陥没が発生したケースは少ない。だが、深さ50センチに満たない小規模なものを含めれば、道路などの陥没事故は全国各地で毎日のように発生している。
深さ1メートル以上の陥没は「年に30回以上」
国土交通省下水道事業課の広報担当者は9日のJ-CASTニュースの取材に対し、
「下水道管が原因で発生した陥落事故は年間で3000件以上確認されています。その9割以上が深さ50センチに満たない小規模なものですが、過去には、人身事故につながったケースもあると聞いています」
と話す。深さが1メートルを超えるものは全体の1%程度だというが、それでも年に30件以上こうした規模の陥落が発生していることになる。
実際、比較的大きなものとして、15年2月に名古屋駅近くの歩道で起きた深さ約4メートルの事故や、14年10月に福岡市博多区祇園町の市道が約3メートル陥没した事故が起きていた。いずれも周辺工事が影響したとみられる陥落だが、祇園町のケースは下水道管の移設作業中に起きた事故だった。
陥没の予測は「現在の技術では困難」
続発している下水道管による道路陥没は、老朽化した管の破損が原因だ。そのため、国交省の担当者は、
「下水道管の設置が早かった都市部の方が、陥没のリスクは高い」
と指摘。その上で、50年の耐用年数を超えた下水道管の数が今後増えていくにつれ、「陥没が起きるリスクは高まっていく」とも付け加えた。
では、こうした小規模な陥落によって、どんな危険が考えられるのか。地盤工学を専門とする筑波大学大学院の松島亘志教授は取材に対し、
「周辺の地盤が崩れる可能性はありませんが、たとえ小規模であっても様々な危険が考えられます。当然ですが道路の交通に影響は出ますし、小さな穴が大きな車両事故につながる可能性も十分に考えられます」
と話す。その上で、長さ約46万キロにも及ぶ下水道管の調査・点検を徹底することは不可能だとして、陥没の予測は「現在の技術では困難」とも指摘していた。