「がん」「中枢神経」「消化器」という重点分野に注力
今回のバリアント社の胃腸薬事業を巡る「1兆円買収」は、ナイコメッドなどを買収した当時とステージが違っている。大きな特徴は「選択と集中」を進めている点だ。
武田の年間売上高は2016年3月期で約1兆8000億円と日本勢では首位だが、米ファイザーなど5兆円規模の海外勢の背中は遠く、売上高で世界上位10社入りをうかがう程度にとどまる。ただ、武田としては規模拡大も重要課題だが、「何でもやる」のではなく、「がん」「中枢神経」「消化器」という重点分野に注力する方針。有力な新薬を開発するには1000億円規模の費用が必要とされるだけに、得意分野を絞る必要があることも背景にある。
ウェバー氏率いる武田は、選択と集中のためには「しがらみ」にとらわれない。今回の1兆円買収交渉と並行して富士フイルムホールディングスに、傘下の試薬大手「和光純薬工業」の売却交渉(総額約2000億円)を進めている。同社は、武田が株の約7割を持つ半面、創業家の武田家一族が株主に名を連ねる。重点事業との関連が薄いとはいえ、普通のサラリーマン社長なら腰が引ける案件だが、外国人社長のもとで文字通り「聖域なき改革」に踏み込んでいる武田の姿がそこにある。