韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友の民間人女性、チェ・スンシル(崔順実)容疑者が韓国政府の機密情報を不正に受け取っていた問題で、退陣に向けたカウントダウンがいよいよ始まりつつあるようだ。
世代によっては、すでに支持率は「ゼロ」に近い状態だ。週末には100万人規模の集会も予定されており、朴大統領に対する批判がさらに高まるのは確実だ。検察は朴大統領の元側近3人の取り調べを本格化させており、チェ容疑者の「国政関与」の実態がさらに明らかになりつつある。朴氏に対する調査も近いとみられ、外堀は埋まりつつある。
大統領府顔パスで、国政文書を事前検閲
一連の疑惑は、チェ容疑者が朴大統領から国政・外交文書を事前に受け取って添削していたなどと韓国のケーブルテレビ局、JTBCが指摘したことが発端だ。ハンギョレ新聞によると、チェ容疑者は青瓦台(大統領府)に検問を受けずに出入りすることができる事実上の「顔パス」状態だったとされる。また、チェ容疑者の事業や娘の進学などに政府関係者が便宜を図っていた疑惑などが相次いで報じられている。
朴大統領はチェ容疑者の父親(故人)とも古くから親しかったとされる。この父親は新興宗教団体の代表だったこともあるため、その宗教との関係も含め、一民間人に過ぎないチェ容疑者と朴大統領の「異様な距離感」に、国民からの批判が高まっている。
調査会社のギャラップが11月1~3日かけて行った世論調査では、朴大統領の支持率は前月同期(10月第1週)から24ポイントも低い5%まで下落。歴代大統領の中で最低を記録した。
さらにその内訳に目を転じると、地域別では、最も高かったのが、朴氏が地盤としている大邱・慶尚北道だが、それでも10%。首都ソウルは2%だ。世代別では、10~20代、30代が1%。60代以上は13%あり、高齢者の支持率の高さが全体を支えているに過ぎない。職業別では、主婦からは10%から支持を得たが、学生の支持率は空欄になっている。これはサンプルが少なすぎるため測定できないことが原因で、事実上の「ゼロ」だ。若者や学生など、今後の韓国社会を担う層からの支持は皆無というわけだ。
週末には再び100万人の抗議集会
こういった状況を反映されたのか、世論調査の結果が発表された翌日の5日に行われた抗議集会は、きわめて大規模なものになった。韓国メディアはソウルで20万人、地方で10万人が参加したと伝えている。このデモの主催者は12日にも集会を開く予定で、100万人の参加を目指すとしている。
安哲秀(アン・チョルス)前国民の党代表や文在寅(ムン・ジェイン)前民主党代表といった、過去の大統領選候補は続々と朴大統領の辞任を要求しているのに加えて、与党のセヌリ党からも批判が出た。聯合ニュースによると、金武星(キム・ムソン)前代表は11月7日に記者会見して、朴大統領が「憲法を破壊して国政を運営した」などと批判。「あまりにも大きな衝撃が国民の不幸につながる恐れがある」として大統領の弾劾には否定的だが、離党を迫った。セヌリ党は朴大統領に近い李貞鉉(イ・ジョンヒョン)代表が代表を務めており、金氏は「非主流派」のリーダー格。
京郷新聞によると、11月7日には、ソウル大の教授700人以上が連名で、
「朴槿恵政権が犯した国政壟断(ろうだん)と民生破綻は臨界点を超えた」
などとして、朴氏の退陣を求める声明を発表。同紙は、声明に参加した数は、14年のセウォル号沈没事故や15年の歴史教科書国定化反対運動を上回る規模になるという。