横浜市内で87歳が軽トラックで小学1年生の死亡事故を起こすなど、高齢者の運転免許を巡ってテレビのワイドショーなどでも議論になっている。しかし、当の高齢者にとって、免許返納への抵抗感はかなり強いようなのだ。
過失運転致死傷の疑いで逮捕された容疑者の男(87)は、送検時のテレビ映像を見ると、背中を丸めながらよろよろと歩く様子が印象的だった。
75歳以上が起こした死亡事故は、全体の1割超
2016年10月28日に起きたこの事故では、小学生が死亡したほか、7人が重軽傷を負う惨事になった。報道によると、男は、前日から夜通し運転し、神奈川県警の調べに「どうしてあそこに行ったのか覚えていない」と供述しているという。3年前の免許更新時には異常がなかったというが、県警では、認知症の疑いもあるとして調べている。
ここ数年、高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えたりするといった、高齢者の重大事故がいくつも報じられている。警察庁の統計によると、75歳以上の高齢者が起こした死亡事故は、15年は全体の1割超も占めていた。
09年の道交法改正で、75歳以上は3年に1度の免許更新時に認知機能検査が義務付けられた。ところが、この時点では、検査で「認知症の恐れがある」とされても、そのまま更新されていた。そのため、15年の改正では、「認知症の恐れがある」とされた場合に医師の診断が義務付けられ、17年3月から施行されることになった。認知症と診断されれば、免許の停止や取り消しになる。
しかし、ネット掲示板などでは、こうした制度でも十分ではないといった声が出ている。「今の道交法は甘すぎる」「せめて認知症の検査は毎年やれよ」「75歳で免許は強制返納でもいいくらい」といったものだ。
もっとも、運転に不安を持つ高齢者のために、免許の自主返納制度はある。返納すれば、運転経歴証明書が希望者に発行され、身分証代わりにもなる。