連合「ベア2%」に早くも悲観論 「官製春闘」への冷めた声

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「外堀を埋められた」連合

   神津会長の背中を押したのは、政府の賃上げへの強い姿勢だ。9月30日に開かれた政府の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で、民間議員4人が、経済再生のためには継続的な賃上げを通じて2%の物価上昇を実現することが重要だと提言した。この会議では、新浪剛史サントリーホールディングス社長が、自社で3%の賃上げに取り組む意向を表明。安倍首相は「経済界全体に賃上げの動きが広がることを期待したい」と歓迎、麻生太郎財務相は「大きく賃上げする企業がないと意識が変わらない」と指摘した。

   日銀の金融政策頼みのアベノミクスの限界が指摘される中、賃上げ→物価上昇→デフレ脱却の好循環を呼び込みたいというのが政府の狙いで、連合としても「ここで弱気を見せては存在意義を問われる」(連合関係者)と、いわば外堀を埋められた状態だった。

   一方、経済界は複雑だ。日本商工会議所の三村明夫会頭は10月20日の記者会見で、その日決まった連合の要求について、「率直に言ってちょっと高いと思う。もうちょっと現実的な実態を踏まえて議論が進んでいくのではないか」と述べ、早速牽制した。経団連の榊原定征(さだゆき)会長は、先の諮問会議で賃上げを後押しする提言をした民間議員4人の中の1人だが、この会議の場で、「若者や子育て世帯、非正規社員へ配分を高める方策を進める」と発言し、連合が求める「ベア」には慎重な姿勢をにじませた。「総論での賃上げの必要は認めつつ、業種による業績のばらつきなどにも配慮し、特に、将来的な人件費負担を増やすベアには、おいそれと応じられない考えを示したもの」(全国紙経済部デスク)といえそうだ。

   経団連は年明け1月に公表する「経営労働政策特別委員会報告」で春闘への方針を示す。2016年1月の方針では、前年末からの円高、株安などを受けて、「年収ベースの賃金引上げ」という表現で、賞与など、その年限りの年収増加を中心に位置づけ、ベアには慎重な姿勢を示したが、今回も、これを踏襲しつつ、どのような方向性を示すのか。いずれにせよ、経済状況の厳しさから、今年より賃上げには一段と慎重になるとみる向きが多い。

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