「言葉」を話す脳が左脳だから右利きが優位に
最近、有力な説が「右脳・左脳説」だ。「左右学」を研究している西山賢一・埼玉大学名誉教授は、2015年4月12日付の日刊ゲンダイ「人類の9割『右利き』はなぜ?」のインタビューにこう説明している(要約抜粋)。
「右利きが増えた理由は、約6万年前の『言葉』の誕生です。より複雑な道具を作り、集団で狩りをするには、言葉によるコミュニケーションが必要不可欠。急速に言語脳である左脳を発達させた人類は、結果的に左脳とつながっている右半身が優位になり、右利きが増えていったと考えられます」
人間の脳は、おおまかにいうと、左脳が右半身、右脳が左半身をコントロールしている。言語をつかさどる左脳が発達したため右利きが増えたという。では、なぜ左利きの人が1割存在するのか。西山名誉教授はこう推測する。
「左利きは(クリエイティブな働きをする)右脳が優位で、誰も考えつかない独創的な武器を作るなどして必要とされたのでは。論理的な左脳だけでは円滑なコミュニケーションが成り立たない。社会の潤滑油としての役割も担ったと思われます」
カンザス大学が発表したプレスリリースによると、デイビッド・フライヤー名誉教授(人類学)は、アフリカのタンザニアで見つかった約180万年前の初期人類ホモ・ハビリスの化石のあごの部分から、右利きであることを示す最古の証拠を見つけた。前歯の唇側を調べると、擦り傷がたくさんあり、ほとんどの傷が左上から右下に流れていた。この傷は、口にくわえた硬い食べ物を左手で引っ張り、右手に持った石器で切断する時に、食べ物が歯の表面にこすれてできた。
数十万~数万年前まで生きていたネアンデルタール人は右利きが多かったことがわかっているが、それ以前の人類も右利きが多いことを推測する有力な手掛かりになるという。ということは、ホモ・ハビリスも言葉を話した可能性があるということだろうか? その点については、フライヤー教授はプレスリリースの中で、慎重にコメントしている。
「今回の発見は、ホモ・ハビリスの脳が類人猿より我々に近く、左右対称ではなかった可能性を示唆しています。類人猿では右利きの割合はほぼ50-50、人間は9割。化石からは脳の構造まではわかりませんが、さらに研究が進めば、右利きが言語能力の出発点であることを突きとめることができるでしょう」