一転して強まった「ドル売り、円買い」
このところ、ドル円相場は2016年12月にも実施すると予測されている米国の利上げ期待を背景に、投資家が「ドル買い」を強めていた。東京株式市場が急落を招いたのは、その動きが反転したためだ。
米大統領選で、クリントン氏とトランプ氏の支持率が拮抗。先行き不透明感から投資家のリスク回避姿勢が強まり、「ドル売り、円買い」の動きが強まった。2016年11月2日の東京外国為替市場で、円相場は一時1ドル103円60銭台まで上昇して、10月21日以来の高値を付けた。それに伴い、企業の業績悪化への懸念が再燃したことがある。
民主党のクリントン氏は、オバマ大統領の政策を原則として引き継ぐとみられている。「富裕層や大企業への増税」を掲げ、また金融分野の規制強化を主張しているため、株式市場にとってはポジティブとはいえないが、「現状から急変するということはないでしょう」と、前出の第一生命経済研究所の藤代宏一氏はいう。
その半面、トランプ氏が「逆転」で大統領に当選した場合、ドル円相場は円高に動くとの見方が少なくない。トランプ氏は、これまで米国の国益を前面に押し出してきた。そのことから「ドル安政策をとる」とされるが、そもそも政策への不透明感が高いため、為替市場ではリスク回避の円買いが増えるとの予測が広がっている。
そうなると、円高がデメリットになりやすい輸送用機器や電気機器、機械などの輸出関連銘柄には逆風になる。
為替市場の影響で、たしかに株価は軟調だが、藤代氏は「米国の株価が最高値を付けていた8月には、クリントン氏とトランプ氏の支持率はもっと拮抗していましたよ。そうしてみると、トランプ氏のリスクは世間がいうほど必ずしも大きくないと思います。共和党の資本主義寄りの政策が米経済の追い風になる可能性は高いですし、支持する人も少なくありません。トランプ氏だからダメというわけではないのではないでしょうか」と話す。
2016年11月2日の東京株式市場の日経平均株価も1万7100円台をキープしており、「堅調」と判断している。