年をとるのが楽しくなる100歳の謎 脳と心に起こるドラマチックな変化

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80歳を超えると、脳が嫌ことを忘れさせてくれる

   様々な研究で「生きがいを感じている人は長生きをする」というデータが出るのは、脳が喜びを感じ炎症反応を抑えるからだった。また、年をとると、脳そのものがポジティブに人生を受け止めることもわかってきた。世界最高齢の116歳のイタリア人女性、エンマ・モラーノさんは、番組取材班の「今のお気持ちは?」との問いにこう答えた。

モラーノさん「今が一番しあわせよ」

   モラーノさんは14年間寝たきりの生活を続けている。それでも「しあわせ」というのは認知症のせいではない。頭は比較的しっかりしている。彼女の高齢者特有の「明るさ」に達した心境を、最近の加齢医学では「老年的超越」と呼ぶ。大阪大学の権藤泰之准教授はこう説明する。

権藤准教授「多くの高齢者をインタビューした私の研究では、80歳くらいから、ネガティブなことを感じない脳になり、ポジティブな生きがいの感情が上昇してきます。高齢になると、記憶力は衰えますが、感情をつかさどる前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)は衰えないのです」

   80歳を超えると、人生を肯定的にとらえる感情が強くなるという。米国の研究者がこんな実験をした。若者と高齢者に「楽しい写真」と「不愉快な写真」の2種を見せた。「楽しい写真」は可愛いウサギ、孫を抱いたお爺さんなど。「不愉快な写真」は墓場、ゴキブリが乗ったピザなど。若者は両方の写真を同じように記憶していたが、高齢者は「不愉快な写真」は忘れてしまい、「楽しい写真」の方をよく覚えていた。

権藤准教授「脳が、つらいことが起こるとどうなるか知っていますから、あえてネガティブな物事を遮断し、ポジティブなことに注意を向けるように働くのです。だから、高齢者の1人暮らしはさびしそうに見えますが、決して本人はさびしくはないのです」

   最後に日野原さんは、哲学者のマルティン・ウーバーの言葉を引用しこう語った。

日野原さん「新しいことを始めることを忘れない限り、人はいつまでも若く生きることができますよ」
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