燃費不正問題を起こし、経営不振にあえぐ三菱自動車の会長に、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が就任する。1990年代に経営危機に陥った日産自動車を立て直した「豪腕」で、三菱自の再建に挑む構えだ。ゴーン流の経営改革で、不祥事を繰り返した三菱自はよみがえるのか。
「三菱自との関係を断ち切るか、あるいは出資して回復を後押しするか。当社は再生の道を選んだ」。ゴーン氏は2016年10月20日の記者会見で、三菱自の再建にかける並々ならぬ意欲を示した。
「抜本改革には外の血が必要」
日産はこの日、三菱自に34%を出資し、事実上の傘下に収めた。同時に、ゴーン氏が会長に就き、三菱自の益子修会長兼社長を社長に留任する人事案を発表した。
ゴーン氏自ら三菱自に乗り込むのは、それだけ三菱自の再建が困難であることの裏返しといえる。三菱自では燃費不正問題の発覚から4か月がたった8月末、燃費の再測定で有利なデータだけを選んでいた不正が再び明らかになった。燃費不正問題を反省して再発防止を進めるどころか、さっそく?の上塗りを重ねるあきれた企業体質は、国土交通省を激怒させた。
先頭に立って信頼回復を進めるべき人材も枯渇していた。三菱自は2000年代、2度にわたるリコール隠し問題を起こして経営危機に直面し、三菱東京UFJ銀行、三菱重工業、三菱商事の三菱グループ「御三家」から経営支援を受けた。以来、経営の重要ポストは三菱商事出身の益子氏をはじめ、グループから派遣される人材が占める。2014年にようやく生え抜きとして相川哲郎氏が社長に就き、社内の期待を集めたが、今回の燃費不正問題であえなく引責辞任に追い込まれた。
自浄作用が働かず、人材もいない三菱自に自立再建は無理――。ゴーン氏がこう考え、自ら会長に就く判断をしたのも当然といえる。益子氏は新体制の発表前、「抜本改革には外の血が必要」と周囲に語っていたという。