過労によってうつ病などの精神疾患を発症した人は30代が最も多く、労災が認められたケースの3割を占めていることが厚生労働省の調べでわかった。
大手広告代理店の電通の新人女性社員(当時24)が過労自殺した問題で、東京労働局が同社へ立ち入り調査に入ったばかりだが、調べによると、精神疾患で労災認定を受けたケースは20代を含めると男性で約5割、女性は約6割を若い働き手が占めており、深刻な労働実態が浮き彫りになった。
うつ病などの発症年齢、30代男性436人、女性195人
厚生労働省が2016年10月25日に開いた過労死防止対策推進協議会で、過労によってうつ病を発症して15年12月に自殺した電通の新人女性社員の遺族側代理人の委員によると、女性社員の残業時間は15年10月9日~11月7日までに、労災認定の目安となる1か月80時間以上を超える約105時間だった。
しかも、電通は15年8月に長時間労働で是正勧告を受けていた。それにもかかわらず、自殺を防げなかったと指摘した。長時間労働や深夜残業に加えて、嫌がらせやいじめとも思えるようなパワハラがあったようすもうかがえる。
厚労省が初めてまとめた「過労死等防止対策白書」(16年10月7日公表)では、月80時間以上の残業をした社員がいる企業が全体の2割超を占めていたと報告している。なかでも、若年層が過労による精神疾患で労災認定を受けるケースが多い事態を重くみている。
厚労省によると、2010年1月から15年3月までのおよそ5年間に過労が原因でうつ病などの精神疾患になり、労災認定を受けた人は約2000人にのぼり、このうち少なくとも368人が自殺していた。
うつ病などの発症時の年齢をみると、男性は30代が436人で最も多く、全体の31.8%を占めた。次いで40代が392人(28.6%)、20代が262人(19.1%)と続いた。
一方で、女性も最も多かったのは30代の195人(31.2%)。20代の186人(29.8%)が続いた。20代、30代でじつに6割を超えている。
また、自殺で亡くなった人は男性が352人、女性は16人と男性が大半を占め、男性の場合は40代が101人(28.7%)で最も多かった。女性は20代が9人(56.3%)で半分以上を占めていた。
若い人ほど過労で精神的な病気になるケースが多い傾向にあり、その背景には、仕事の内容や仕事量の変化などのほか、職場での嫌がらせやいじめ、上司とのトラブル(パワハラ)といった対人関係が少なくないようだ。
「サラリーマンは気楽な稼業じゃないってことよ」
こうした結果に、インターネットには、
「働かせすぎをやめさせろ」
「サラリーマンは気楽な稼業じゃないってことよ」
「パワハラをどーにかしてくれ!」
「派遣という名で賃金を中抜き、お飾りの手当てを増やして基本給を減らし、残業や休出をサービスさせるからこうなるんだよ」
「もうね、中小企業の社員は異常なくらい精神的にやられてるわ」
「海外ではカウンセラーを常備してるからな。企業は第三者の機関入れろよ」
などと「怒り」の声が圧倒的。
なかには、
「後輩に相談されても、せいぜい転職するか、今後を見つめ直したほうがいいんじゃないかとしか言えなかった・・・」
といった声もあった。
そうしたなか、30代に仕事の負担が増えるのは、そもそも人手不足が続いていることが原因との見方もある。
厚生労働省の「2015年度の労災状況」(16年6月25日公表)によると、仕事による強いストレスなどが原因で精神疾患を発症したとする請求が1515人(14年度比59人増)と、過去最多となったが、請求が多かった業種をみると「社会福祉・介護」や「医療」と、人手不足で過重労働や職場環境の悪化が指摘されている業種だったことがわかった。
さらに、一般企業でも製造業などと中心にリストラが進んだことから、40代、50代が大量に退職して、すでに社内に残ってないため、その負担が30代に重くのしかかっているとの見方もある。
ある企業アナリストは、「リストラで40代の働き盛りが抜けて仕事が増えていることがありますが、50代、60代のモーレツ社員育ちの上司との、いわば『緩衝材』がなくなったことのほうが精神的には大きいと思います」と話す。
厚労省が5年に1度実施している「労働者健康状況調査 2012年版」によると、「過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休職または退職した社員がいる」企業は、1000人以上の事業所で約9割も「いる」という。