突如、大声で泣き始める赤ちゃん。パパ、ママは、なんとか泣き止んでもらおうとあれこれ工夫も苦労もしているだろう。
インターネット上には、特定のテレビ番組やコマーシャル(CM)、動画を泣いている赤ちゃんに見せると効果があるという情報が広まっている。J-CASTヘルスケアでは、実際にこうした映像を見せたことがあるパパ、ママに、赤ちゃんの反応を中心に聞いた。
「96.2%の子どもが泣き止んだ」
東京都内に住む30代女性が「効果あり」と挙げたのは、「ふかふかかふかのうた」という動画だ。ロッテのキャンディー菓子「cafca(カフカ)」用の宣伝用で、口が大きな愛くるしいキャラクターが登場。ほんわかとしたメロディーに乗せて、男性の声で歌が流れる。長さは2分強だ。
30代ママ「息子が生後半年ぐらいのころ、ママ友から『今、話題らしいよ』と教えてもらいました。ずっとぐずっていたのに、動画が始まると1、2秒で泣き止んで見入っていました」
日中、電車やバスの中で泣き始めたら、スマートフォンを出して見せていたという。2分程度で終わるので何度か繰り返して流すこともあったが、「1回だけでご機嫌になる場合もありました」。
この動画は「赤ちゃん」「泣きやむ」で検索すると、「NAVERまとめ」ほか各種情報サイトで取り上げられているのが分かる。育児中の親の間では有名なようだ。ロッテ・カフカのサイトには、「96.2%の子どもが泣き止んだ」として紹介されている。実は動画制作上、多くの趣向が凝らされている。同サイトで、日本音響研究所の鈴木創氏が動画の「秘密」を解説していた。
赤ちゃんは、後ろでいろいろな音が鳴っていると「なんだろう」と興味を覚えて追求する。この反応を「定位反射」といい、「なんだろう」が連続すると、本来泣いていた理由を忘れて泣き止んでいく。動画では、赤ちゃんを飽きさせないように動物の鳴き声や楽器の音など効果音を工夫し、パートごとに音色を変える構成にしている。
さらに赤ちゃんに聞こえやすい6000~7000ヘルツの周波数の音にチューニングし、音程を変化させたり、途中で曲調を変えたりして定位反射を起こさせやすくしている。相当に計算されたつくりだ。
ただし、泣き止まない場合がある。体調が悪い、お腹が空いた、おむつがぬれたり汚れたりしている場合だ。半面、ぐずり泣きしているときには効果があると鈴木氏は説明している。
「抱っこやあやしはほとんど効果がないのに」
埼玉県の20代女性は、「息子が泣いた時の定番」として、TOKYO MXなどで不定期放送されている「ごはんかいじゅうパップ」の動画を見せていると話した。30~60秒のアニメで、「パップ」と「おかずかいじゅう」の「戦い」がユーモラスに描かれている。軽快なメロディーは常に同じだが、おかずかいじゅうによって歌詞やアニメが変わるため、曲数は多い。
20代女性「私の抱っこやあやしはほとんど効果がないですが、何気なく『パップ』を見せた時に直前まで泣いていたのがニコニコになりました」
生後半年~1年ぐらいのころに、よく見せていたそうだ。
テレビ番組で、赤ちゃんの「ぐずり」を解消していると話すのは、神奈川県の30代男性だ。娘が生後10か月前後で、母親が近くにいなくなるとよく泣いたため、「切り札」に使ったのがEテレの乳幼児向け番組「いないいないばあっ!」や「おかあさんといっしょ」だった。番組が始まって音楽が流れると、不思議なほどに「すぐに泣き止んでいました」。番組の録画をためておいて、ぐずり始めるやすぐにテレビ画面を切り替えたそうだ。
男性の義弟夫婦も以前息子に同じ番組を見せたところ、やはりすぐに泣き止んだという。
取材した3人の口からは出なかったが、以前から「赤ちゃんが泣きやむ」として知られているのが、財津一郎が登場する「タケモトピアノ」のCMだ。「もっともーっと、タケモット」「ピアノ売ってちょーだーい」とのフレーズが登場する、インパクトの強い2種類の映像で、今もしばしばテレビで流れる。
同社ウェブサイトでは、前出の日本音響研究所がCMの解析を行った結果が出ていた。「音がランダムで飽きない」「本能的に振り向く音が多い」「音楽の途中でリズムが変わる」と、赤ちゃんの興味を引くポイントが詰まっているとしている。