MRJの納期大幅遅れや原発事業の壁
今後の造船事業は液化天然ガス(LNG)船のほか、5万~10万トン級のフェリーや中小型客船に注力する方針。また、今治造船(愛媛県今治市)、大島造船所(長崎県西海市)、名村造船所(大阪市)と進めている提携協議を2016年度中にまとめ、船の設計は三菱重工が担う、などの役割分担を図る。将来的には造船事業を分社化し、今治など3社と資本提携することも視野に入れている。
造船と並ぶ三菱重工が抱える「苦」と言えば、子会社「三菱航空機」が開発中のジェット旅客機「MRJ」の納期が大幅に遅れていることだ。燃費の良さを売りにしているが、あまり遅れるようだとライバルに追いつかれ、受注に影響しかねない。
さらに原発事業は(1)トルコでのプラント受注が不透明、(2)米国で巨額賠償問題に直面、(3)核燃料事業を日立製作所、東芝と統合する計画がメリットに乏しい――と壁にぶつかっている。また、火力発電プラント事業についての日立との共同出資企業「三菱日立パワーシステムズ」も、受注案件の損失負担を巡ってトラブルとなっている。
まさに「あっちからもこっちからも火の手が上がっている」(三菱重工関係者)ような状態。防衛装備品をはじめとする明治以来の官需や、各業界のメーカーに納める産業機械などのおかげで、さすがに通期決算で経常赤字に陥ることはない。しかし、仮に軽自動車の燃費不正問題に揺れた三菱自動車の面倒まで見ることになったら、「本体」の三菱重工まで揺らぎかねないところだった。そこは、日産自動車が資本提携してくれたことで何とか助かった形だ。