甘味料メープルシロップをテーマにした企業やメディア向けのセミナーが2016年10月2日、東京で開かれた。
主催はケベック・メープル製品生産者協会だが、会場はカナダ大使館。重要な輸出品として国をあげての支援らしい。
63種類のポリフェノールが含まれている
フリーの管理栄養士、安中千絵さんが、メープルシロップの栄養価を解説した。メープルシロップはサトウカエデの樹液を取り、煮詰めただけの自然食品。精製した砂糖のミネラルやビタミンはほとんどゼロだが、未精製のメープルシロップは豊富だ。栄養価が高いイメージがある蜂蜜と比較すると、カリウムは17倍、マグネシウムは20倍、カルシウムは50倍、ビタミンB1は 7倍、B2は 130倍というから驚く。これらは日本人の多くが不足しているミネラルやビタミンで「慢性的な疲労や、やる気のなさの原因かも知れません」と安中さん。
そのうえ、メープルシロップには63種類ものポリフェノールが含まれており、量も蜂蜜の 4倍はある。ポリフェノールは植物の色素や苦み、渋み成分で、自然環境から身を守る防御物質でもある。細胞を傷つけ、がんや動脈硬化につながる活性酸素を抑える働きが期待できる。
安中さんに次いで神奈川県科学技術アカデミー研究員、亀井飛鳥さんが、主にポリフェノールの働きの最新研究を報告した。ネズミ実験ではメープルシロップの摂取で肝機能が改善、遺伝子分析からも高脂肪食による肝臓の炎症を緩和している可能性の高いことが明らかになってきた。
私が親しい消費者グループ・食品と暮らしの安全基金は、近年増えている発達障害の子どもがミネラル分の豊富な食事で改善したとして、ミネラル不足を警告している。市販の加工食品、レトルト食品、調理食品、外食を分析すると、多くは表示や食品成分表のミネラル値を大きく下回っていた。
メープルシロップは加熱でも栄養価は変わらず、和食を含めた料理にも使える。今回のセミナーを聞いて私は、精製した砂糖や蜂蜜より、なるべくメープルシロップや黒砂糖を使おうという気になった。食品成分表を見て、黒砂糖にもメープルシロップ同様、ミネラル分が豊富とわかったからだ。(医療ジャーナリスト・田辺功)