「性格が悪い人ほど長生きする」とよくいわれる。やりたい放題、言いたい放題だからストレスがたまらず病気になりにくい、というのが理由のようだ。
しかし、仮に長生きできたとしても、いつまでも憎まれ口を叩けるとは限らない。性格の悪い人は、性格がいい人に比べ、認知症になるリスクが3倍も高くなるという研究があるからだ。
皮肉っぽい人は素直な人に比べ3倍以上も危険
この研究をまとめたのは、東フィンランド大学のアンナマイヤ・トルパネン博士だ。米国神経学会の機関誌「American Academy of Neurology」(電子版)の2014年5月28日号に発表した。
米国神経学会の同日付プレスリリースによると、トルパネン博士は、老人施設などでの経験から、不信感の強い皮肉屋ほど認知症を発症しやすいことに着目した。そこで、健康な平均年齢71歳の男女1449人を対象に、認知能力のテストと「皮肉っぽさ」(cynical=シニカル)の度合いを測るアンケート調査を行なった。皮肉っぽさの調査とは、たとえば、次のような問いに対する反応だ。
(1)ほとんどの人は出世のためにウソをつくと思う。
(2)ほとんどの人は自分の利益や優位性を獲得するためには、やや不正な手段もいとわないと思う。
(3)自分の利益を守るためには、他人を信用しない方がいいと思う。
こうした問いにどの程度同意できるかを回答してもらい、そのスコアから皮肉屋である度合いを「高」「中」「低」の3段階で評価した。「高」の人ほど性格が悪いということになる。
研究開始から8年後、生存しており比較的健康状態がいい622人に、再び認知能力のテストを行なうと、46人が認知症と診断された。皮肉屋の度合いで比較すると、「高」の164人中14人(8.5%)が認知症を発症、「低」の212人中9人(4.2%)の2倍だった。この割合に、高血圧、高コレステロール値、喫煙などの認知症リスクを考慮し調整すると、性格が一番悪い人(「高」)は、一番いい人(「低」)に比べ、認知症の発症リスクが3倍以上になることがわかった。