日本テレビは、産経新聞の記事に抗議した、とホームページで公表した。
対象記事は、2015年に放送された「NNNドキュメント」(日本テレビ系)の「南京事件 兵士たちの遺言」についての検証記事。日本テレビ側は、「番組が放送した事実と大きく異なっていた」として産経側に「厳重に抗議」したという。
「防寒着姿で倒れる人々」の写真
15年10月4日放送の同番組は、元日本軍兵士の当時の日記といった「一次資料」を紐解きながら、1937年12月に揚子江沿いで起きた出来事について迫る内容だった。
これについて同紙は10月16日付朝刊に「『虐殺』写真に裏付けなし 日テレ系番組『南京事件』検証」と題した記事(東京最終版)を載せ、番組内で紹介されていた1枚の写真に焦点を当てた。連載「歴史戦」の1本で、3面に8段にわたり大きく掲載された。
写真は防寒着姿で倒れている多くの人々を写したもの。冒頭で「南京陥落後の中国で日本人が入手した写真と言われている」と紹介され、番組最後に再び登場した際には、現在の揚子江付近から見える山並みと、写真の背景の山の形状が似ていることが指摘されていた。
産経記事では「南京陥落後、旧日本軍が国際法に違反して捕虜を『虐殺』。元兵士の日記の記述と川岸の人々の写真がそれを裏付けている―そんな印象を与えて終わった」と指摘した。
また、番組が取り上げたものと同じ写真(日テレによると「類似写真」)が、「南京大虐殺、証拠の写真」として毎日新聞の1988年記事に掲載されていたと指摘。NNNドキュメントでは、毎日記事と同様に「被写体が中国側の記録に残されているような同士討ちや溺死、戦死した中国兵である可能性」に触れていないとして、これを問題視した。また、日本テレビ広報部のコメントとして「番組で紹介した資料の詳細についてはお答えしておりません」との回答も載せている。
日テレ側「虐殺写真と断定して放送はしていない」
これに対し、日本テレビは10月26日、NNNドキュメントの公式サイトにお知らせ文を掲載し、先の産経記事の内容は「番組が放送した事実と大きく異なっていた」と反論した。
日テレ側は「『虐殺』写真に裏付けなし」という大見出しが「事実ではない」と主張。例の写真については「虐殺写真と断定して放送はしていない」と強調し、「類似写真」を掲載した毎日新聞の記事と「番組の内容と混同し、批判した」とも指摘した。
「一場面を抽出して無関係な他社報道を引用し、『印象』をもとに大見出しで批判し、いかにも放送全体に問題があるかのように書かれた記事は、不適切と言わざるをえません」
また、見出し以外の複数個所についても反論し、「以上のように産経新聞の記事は客観性を著しく欠く恣意的なものであり、当社は厳重に抗議します」と結んだ。
産経新聞は27日、J-CASTニュースの取材に「当社の見解は産経新聞10月16日付の当該記事の通りです」とコメント。抗議文は25日付だったという。
この番組「南京事件 兵士たちの遺言」は16年6月、優れたテレビ番組などに贈られる「ギャラクシー賞」のテレビ部門優秀賞として表彰された。