大阪・難波を拠点にするNMB48の山本彩(さやか)さん(23)が2016年10月26日、初のソロアルバム「Rainbow(レインボー)」を発売し、東京・文京区の東京ドームシティで記念イベントを開いた。収録された13曲のうち6曲を自らが作詞作曲。自らの「夢」だと繰り返し表明してきたシンガーソングライターとしての道に本格的に踏み出した。
ソロ活動が本格化すれば視野に入ってくるとみられるのがNMB48からの卒業だが、山本さんはNMB48のキャプテンを務める「絶対的エース」で、言い換えれば「1強」。山本さんの卒業はグループの屋台骨を揺るがしかねないだけに、卒業は「まだ考えられない」と慎重だ。
イベント終盤には観客の静止画撮影を「解禁」
アルバムは「東京事変」などに携わった亀田誠治さんがプロデュースし、GLAYのTAKUROさんやスガシカオさんらも楽曲を提供。JTのCMでの弾き語りで有名になった「ひといきつきながら」も収録した。
イベントでは、自らが作詞作曲した「レインボーローズ」「雪恋」、スガシカオさんが作詞作曲した「メロディ」の計3曲を、約2000人(主催者発表)の観客を前に披露。音楽イベントでは観客の録音・撮影は禁じられることが一般的だが、3曲目の静止画撮影が解禁され、イベントの最後には観客向けのフォトセッション(写真撮影)の時間も設けられた。15年秋のNHK連続テレビ小説「あさが来た」の主題歌「365日の紙飛行機」(AKB48)でセンターポジションを務めた山本さんの圧倒的な知名度を背景に、ソーシャルメディアの「拡散力」で山本さんの新たな側面をアピールしたい考えのようだ。
山本さんは10月27日未明放送の「オールナイトニッポン」(ニッポン放送)で、シンガーソングライターという「夢」について、
「物心ついた頃には、何となく思い始めていた。小学校6年生とか」
と話した。だが、NMB48という「アイドル」を卒業してシンガーソングライターに一本化することは、当面は現実的ではないようだ。
10月26日夕方のイベント後の囲み取材で、NMB48を卒業するメンバーが相次いでいることについて、山本さんは
「それぞれNMBに入ってきたときと同じように、自分の夢を追いかけて卒業していくメンバーたちなので、そこは同じメンバーとして背中を押したい。残っているメンバーのためにも、今私がやっている活動が希望になればいい」
などとして、自らのソロ活動がNMB48の現役メンバーにとってロールモデルになり得るとの考えだ。
「あんまりそういうこと言うとね、ファンの人がね、ザワついちゃうんで...」
自らの卒業については「まだ考えられないかなー、っていう状況です」。囲み取材は観客が見守るステージ上で行われたこともあって、
「何かまだやり残す(やり残した)ことが?」
との質問には恐る恐る観客席を見ながら
「ちょっとね、あんまりそういうこと言うとね、ファンの人がね、ザワついちゃうんで...まだ大丈夫」
と言葉を濁した。記者が「(NMB48のファンにとって)うれしい発言ですね」と念を押すと、山本さんから返ってきたのは
「...と、今は言っておきます」
と、そう遠くない卒業発表に含みを残す発言で、観客からは
「えーっ!」
という声があがっていた。
山本さんの「1強」を象徴するのが、8月26日にNMB48が神戸市内で「いつまで山本彩に頼るのか?」と題して開いたコンサートだ。山本さんは出演せず、それでもチケットが完売すれば山本さん以外のメンバーが新曲のセンターポジションを担うという趣向だったが、チケットは221枚を残して完売せず。センターは山本さんに決まった。
山本さんは9月中旬には
「私の考える事は間違ってるのかな。NMBというグループが好きだしメンバーが好きだよ。私は。輝いて欲しいよ、みんなに」
とツイートし、後に削除。AKB48グループの主要メンバーが集められる楽曲に、自分以外のNMB48メンバーがほとんど参加できない現状に対する複雑な思いを吐露した、との見方が広がった。
今回の囲み取材では、アイドルからの路線変更に関する質問も出た。
「NMBから今回はシンガーソングライターと、音楽の形が変わってきている。今、一番やりたいことにたどり着いたという実感はあるか」
という内容で、山本さんは
「ずっとロックが好きだと思っていたところもあったんですけど、アイドルというものになってみて、今まであまり触れてこなかった楽曲に触れたりとか...。今回のアルバムでも、自分で生んだ曲以外にも触れて、もっといろんな音楽をやってみたいという好奇心の方が今は強い。型にはまらず、いろんな曲を書いていけたらいい」
と応じていた。NMB48の現状を念頭に、既存のアイドル路線にも一定の配慮を見せた可能性もある。