親も周囲も互いに配慮するのが大事
内閣府政策統括官が09年3月に発表した、海外で子育て経験のある父母100人へのインタビュー結果をみると、日本に比べて海外での育児は「子連れの人に周囲が温かい」「ベビーカーで出かけても皆が手伝ってくれる」「妊婦や子ども連れでの外出で、バスや電車の乗り降りの時、出勤途中のサラリーマンも頼まなくても進んで助けてくれた」といった回答がある。内閣府は「海外での子育て経験者の多くが、日本よりも海外の方が『赤ちゃんや子連れに優しい社会である』と実感している」と分析している。
一方で、こんな話もある。3歳の子どもを持つ都内在住のある30代女性に取材すると、「ベビーカーで出かけた先に段差があったので、自分で持ち上げて運ぼうとしたのですが、近くにいた男性が一緒に持ってくれました」という。
J-CASTヘルスケアは、育児関連講座の開催や講演を行う一般社団法人「日本育児支援協会」の花田徹男代表理事に電話取材した。花田氏は、「育児に無理解であるとは一概には言えないかと思います。育児経験があるかどうかでも、他の親子への見方は変わり得ます」と話す。
「同じ育児中の人は、公共の場でも子どもの泣き声を聞いていられるかと思いますが、そうではない人や、子どもが成人して何年も経っている人は、不快に思うかもしれません。ただ昨今は、母親だけでなく父親や祖父母が育児に携わる機会が増えていますので、徐々に理解も広がっていくのではないかと思います」
それでも、社会が育児に不寛容だと感じる親が一定数存在するのも事実だ。花田氏は、「特効薬はなく、すぐに解消はできないでしょう」として、こう述べる。
「長い目で見て、子育てへの理解が深まるよう啓発を続けるほかないと思います。たとえば、人ごみで子どもの泣き声が聞こえたら、イライラしてしまうのは仕方ないと思います。でも、それをにらんだり、『うるさい』と怒ったりするのではなく、温かく見守れるか。子どもの親もある程度気を遣うべきでしょうし、お互いに配慮するという心掛けができるかどうかが、大事かと思います」
5歳の子どもを持つ都内在住の40代女性は、「子どもが迷惑をかけたら親の私の責任です。でも、子どもはどんなに注意してもなかなか聞いてくれない場合もあります」と話す。また、「たとえば大人のショルダーバッグは、小さい子どもの顔に当たる高さです。電車内や歩道で当たりそうになったら、親が少し手をバッグの前に入れて防がせてもらうのは許してほしいかなと思います」と理解を求めた。