「代替フロン規制」後のカーエアコン 「世界基準」制するのは日本?米国?

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   エアコンや冷蔵庫の冷媒に使われる「代替フロン」というガスの排出規制を強化する国際的な合意が成立した。オゾン層を破壊する「特定フロン」を規制している「モントリオール議定書」の締約国会議が2016年10月15日、新たに「代替フロン」の生産量の段階的な規制を盛り込んだ改定案を採択した。これにより、日本などの先進国は36年までに代替フロンの生産量を85%削減することになった。参加した197か国・地域のうち20か国以上の批准により、19年に発効する。

   フロンは、炭素(C)とフッ素(F)の化合物で、アンモニアに代わる冷媒として人工的に開発された。オゾン層破壊が問題になった1980年代に、その元凶とされたのがクロロフルオロカーボン(CFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)といった特定フロンだ。モントリオール議定書はオゾン層破壊物質規制を目的に1987年に採択、89年に発効し、その後も締約国会議を開いて規制の議論を積み重ねた。その結果、特定フロンについてはCFCを2009年に全廃、HCFCを先進国が20年、途上国が30年までに原則全廃することになり、使用量は着実に減っている。

  • 「代替フロン」というガスがエアコンの冷媒に使われている(画像はイメージ)
    「代替フロン」というガスがエアコンの冷媒に使われている(画像はイメージ)
  • 「代替フロン」というガスがエアコンの冷媒に使われている(画像はイメージ)

合意された規制の内容

   他方で、これに代わって、オゾン層を破壊しない冷媒として新たに開発され、急速に普及したのがハイドロフルオロカーボン(HFC)で、塩素を水素(H)に置き換えたので、「代替フロン」と呼ばれる。ところが、温室効果は二酸化炭素(CO2)の数百倍~1万倍という「副作用」があることから、規制が議論されてきた。2016年11月4日に発効する地球温暖化を防ぐための「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて「2度未満」にすることを目標として掲げており、代替フロンの規制も重要なテーマになっている。

   今回の合意の詳しい内容は、(1)日米など先進国は2019年にHFCの生産規制を始め、36年までに11~13年の平均と比べ、CO2で換算して85%にあたる量を減らす(2)中国や途上国は20~22年を基準に、24年から規制を始めて45年までに80%削減(3)厳しい暑さで冷房需要の多いインドと中東などの産油国は24~26年を基準に、28年に規制を始め、47年までに85%減らす――などなっている。

   日本のHFC排出量は3580万トン(2014年度)で、10年前の約3倍に増加している。オゾン層保護法は代替フロンの生産量を規制するがHFCは対象外だ。一方、15年4月にフロン排出抑制法が施行され、エアコンや冷蔵冷凍機器の製造・輸入業者に、より温暖化効果が小さい物質に切り替えるよう対策を求めるが、強制力はなく、業務用エアコンや冷凍庫を使うスーパーなどのユーザーに代替フロンなどを使った機器の点検や漏れた量の報告を義務付けているものの、排出量は直接制限していない。

法整備が必要

   今回の合意実施のため、二つの法律のいずれかを改正するか、新しい法律を制定する必要があり、政府は早急に検討を始める方針だ。

   HFCの削減交渉をにらみ、民間では様々な取り組みが進んでいる。

   エアコンメーカーで代替フロン自体も生産しているダイキン工業は、温暖化効果がHFCの約3分の1と比較的小さい新型代替フロン冷媒「R32」を2010年に開発。国内向けの家庭用エアコンは既に全量を切り替え済みで、海外向けでも採用機種を増やしている。パナソニックはCO2を冷媒に使う業務用冷蔵冷凍機を販売。業務用冷凍機大手の前川製作所(東京都江東区)や日本熱源システム(新宿区)などはCO2やアンモニアを冷媒に用いる製品を開発している。

   海外では、カーエアコンや業務用冷凍機では、米ハネウェル・インターナショナルや、米デュポンから分社した米ケマーズなど米国勢が、温暖化効果がCO2と同等の冷媒を開発済みで、カーエアコンでは米社が世界標準になるとの見方が出ている。

   生産から排出まで、複数の法律にまたがる現状を整理するとともに、まだコストが高いという自然冷媒製品の低価格化や新冷媒の開発を支援するなど、国内メーカーの競争力アップの視点も必要だ。

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