将棋ソフトの不正使用疑惑をめぐる「因縁の対局」が、NHK Eテレで2016年10月23日に放送された。対局したのは、不正疑惑が浮上した当の三浦弘行九段(42)と、ツイッターで「(三浦氏は)1億%クロ」と主張していた橋本崇載八段(33)だ。
20日発売(首都圏など)の「週刊新潮」では、ベテラン棋士の話として「(橋本八段は)連盟に三浦九段の処分を求めた」棋士の1人とも報じていた。こうした背景もあり、将棋ファンから「今最も注目されるカード」「因縁の対決」などと熱い視線が注がれていたこの一局。はたして、その結果は――。
NHK広報部「三浦九段は対局中に1度も離席しなかった」
「(三浦九段は)個人的にも1億%クロだと思っている。奴が除名になるかどうかは知らないけど、俺は二度と戦う気しない」
10月12日に明るみになった三浦九段の「不正疑惑」について、翌13日のツイッターでこう発言していた橋本八段(ツイートはすでに削除されている)。一方の三浦九段は、日本将棋連盟に出場停止処分を受けて以降、2度にわたり「潔白」を訴える文書を公表している。
そんな2人の「直接対決」が放送されたのは、10月23日のEテレの「NHK囲碁と将棋」の番組枠内。「第66回NHK杯テレビ将棋トーナメント」二回戦の対局で、収録は9月19日だったが、放送が「不正疑惑」が表面化した後になったため、がぜん注目を浴びることになった。
NHK杯は持ち時間10分、考慮時間1分×10回の早指し棋戦。持ち時間が切れた場合は、1手あたり30秒以内に指さなければならない。三浦九段は2002年に1度優勝しているが、ここ2大会はともに初戦で敗退していた。
番組冒頭の対局前インタビューで橋本八段は、三浦九段の印象について、
「最近ではタイトル戦の挑戦者にもなられて、すごく充実しているようで、大変な強敵だと思います」
と言及。その上で、「朝起きたときから目の調子が悪くて、(中略)指し手もあんまり見えていないんですけど...」と意味深なコメントを続けた。
橋本八段の「指し手」が何を意味しているのかは分からないが、ツイッターでの過激な批判や週刊新潮の報道もあり、ツイッターやネット掲示板では、
「目が見えない、指し手が見えてないって、なんだろう、皮肉ってるとしか思えない」
「皮肉も込められているのかな...?」
「嫌味にしか聞こえない」
などといぶかる書き込みも数多く出ていた。
なお、NHK広報部の担当者は24日のJ-CASTニュースの取材に対し、「三浦九段は対局中に1度も離席しなかったと、番組の制作スタッフから聞いています」と話していた。
「ノーガードの殴り合い」「激戦」
注目の対局は、先手の橋本八段が仕掛けたことで激しい打ち合いの展開に。番組を見ていた将棋ファンからは、「ノーガードの殴り合い」「激戦」との評もネット上に数多く出ていた。結果は87手で橋本八段が勝利。両者ともに持ち時間を十分に残した早いペースの将棋となった。
対局終了後の「感想戦」(解説者らを交えて、対局を振り返りながら検討すること)では、2人の間に笑いが生まれる場面も。こうした放送を見ていた視聴者からは、
「感想戦も特にわだかまりも感じさせなかったな。二度と指さない、と息巻くようになったのはいつの頃からなんだろうな」
「感想戦のやりとりを見ると、今回の騒動については悲しいとしかいいようがない」
といった声も出ていた。
なお、10月23日の放送日時点では三浦九段がすでに16年中の出場停止処分を受けていたことから、約1時間30分の放送中に、
「この対局は9月19日に行われたものです」
とのテロップが計6回にわたり表示された。
通常、NHK杯の放送では対局(収録)日を表示しないため、ネット上では「異例のテロップ対応」「このテロップをNHK杯で見たことはなかった」といった声も相次いで上がっていた。