吹っ飛んだ配偶者控除の廃止 財務省・自民党税調の実力低下が露呈

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財務省に「追い風」が吹いたが...

   さらに、今年に入って財務省に「追い風」が吹く。安倍晋三政権が女性の活躍を促す「働き方改革」の議論を本格化させたのだ。配偶者控除は、パートの主婦らが年収を103万円以下に抑えようとするため「103万円の壁」と呼ばれ、「女性の就労の妨げになっている」との批判がある。佐藤氏は働き方改革の議論に乗って、配偶者控除の廃止論を一気に推し進めようとした。

   ここ数年、消費税増税などをめぐって官邸と対立し、ことごとく敗れている自民党税調も、大改革を成し遂げてかつての権威を復活させる好機到来と受け止めた。宮沢党税調会長は8月、報道陣に「所得税の大改革を考えている。配偶者控除の見直しが柱だ」と鼻息荒く語った。

   しかし、高所得の専業主婦世帯は増税になる可能性が高い案だけに、首相官邸は菅義偉官房長官を中心に慎重姿勢を崩さなかった。17年夏に東京都議選を控え、支持層に専業主婦が多い公明党からも異論が噴出。今年9月下旬、年明けの衆院解散説が広がると、永田町では慎重論が大勢となった。

   結局、菅官房長官が財務省に指示し、パートの主婦がより長時間働けるよう、配偶者控除の「壁」を103万円から引き上げる案を議論することになった。廃止するはずが一転、拡充されることになり、財務省や自民党税調が目指した「大改革」はもろくも崩れ去った。

   財務省内では「公明党などに十分根回ししないまま、理想論で突っ走って自滅した。ここ数年の税制改正論議はいつも同じ構図」と、佐藤氏ら省幹部への批判がくすぶる。「壁」を引き上げても新たな「壁」ができるだけで、女性の活躍推進につながらないという指摘は多いうえ、低所得の若者を支援するという本来の目的も雲散霧消。財務省や党税調の実力低下だけが際立つ結果になった。

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