胸を打った「病院を撃つな!」展 ほとんど報道されない実態を知る

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   2016年10月1日から5日まで、東京タワーホールで、「国境なき医師団 "紛争地のいま" 展」が開かれた。主催は特定非営利活動法人の国境なき医師団日本。

   ノーベル平和賞は著名なだけの政治家や活動家に授与されたりして疑問が多いが、1999年に受けたこの医師団は珍しく賞に値する団体だと感動した記憶がある。

  • 報道されない「紛争地のいま」(画像はイメージ)
    報道されない「紛争地のいま」(画像はイメージ)
  • 報道されない「紛争地のいま」(画像はイメージ)

傷ついた市民を守る最後の砦が攻撃された

   国境なき医師団は1971年にフランスで設立され、医師・看護師・技師ら約7000人の海外派遣スタッフと約31000人の現地スタッフが加わっている。病院や診療所のある約70の国・地域はどこも戦場で、一般市民が犠牲になっている。

   1年前の2015年10月3日、アフガニスタン北部の「クンドゥズ外傷センター」を米軍機が空爆し、患者ら28人と現地スタッフ14人が殺された。手術台の上で亡くなった患者、建物を出ようとして銃で狙い撃ちされたスタッフもいた。傷ついた市民が命を守る最後の砦として頼ってくる病院だけに悲惨さが際立つ。

   焼けただれた窓に「WHY? (なぜ?)」と書かれた文字、大きな壁の穴と窓枠が残っただけの部屋、たたずむスタッフなどの大きなカラー写真が目を奪う。怪我をした子どもと不安そうな親、かいがいしく動くスタッフ、生まれたばかりらしい赤ちゃんなど爆撃前の写真、さらにはシリア、イエメン、南スーダンなどの病院や診療所の写真も展示されていた。これらの施設も数多くが被災した。

   最大の犠牲者を出したクンドゥズの事件を、米軍は反政府勢力の掃討作戦中で「人為的ミス」による誤爆、誤攻撃だったと釈明、犠牲者1人につき6000ドルなどの見舞金を払ったものの、責任や本格的な賠償はうやむやになったままだ。

   写真展は、くり返される医療施設への攻撃を広く知らせ、「病院を撃つな!」の声を高めようと企画された。私が立ち寄った10月3日は、南スーダンや、事件後のアフガニスタンで活動した国境なき医師団日本・加藤寛幸会長の講演もあった。

   小児科医の加藤さんは南スーダン北西部、山梨県ほどの地域で唯一の病院で多数のマラリア患者、栄養不足や破傷風などの子どもを診療した。3日歩いて病院に着いた火傷の子どもは顔も胸もボロボロだった。多くは助けることができない悲惨な状況だったが、日本では南スーダンの実態はほとんど報道されていない。アフガニスタンでは「海外スタッフに犠牲が出なくてよかった」との声に感動した。加藤さんの話から、医師団の崇高な思いとともに、人間の愚かさや無力感も伝わってきた。(医療ジャーナリスト・田辺功)

姉妹サイト