世界保健機関(WHO)が、肥満や生活習慣病を予防するため、糖分入りの清涼飲料水への課税を呼びかけた。
WHOによると、世界で糖尿病の患者数は1980年に1億800万人だったが、2014年には4億2200万人に増えている。糖分入り飲料が、肥満や糖尿病に苦しむ人々を増やしている要因と指摘。「政府が課税すれば、その人々の命を救える」と主張している。
砂糖の摂取量、WHOのガイドラインでは1日約25グラム...
世界保健機関(WHO)は、糖分が多い清涼飲料水に「20%以上の課税をすれば、人々の摂取量を大きく減らせる」との報告書を、2016年10月11日に発表した。報告書は、WHOの研究グループが生活習慣病などの病気とその予防のための政策についてまとめた。
報告書で、研究グループは砂糖などをたくさん入れて甘くした、糖分が多い清涼飲料水の過剰摂取が肥満や、糖尿病などの生活習慣病が増える原因の一つとしたうえで、20%以上の課税をすれば、摂取量を減らすことができ、ひいては肥満や糖尿病を減らせるとしている。税金を払うことになったら、とくに若者や低所得の人の摂取量を減らせると指摘。「医療費を削減することにもつながる」という。
こうした糖分入りの飲料水への課税については、メキシコがすでに導入。英国やフィリピン、南アフリカなどが導入に向けて検討しているとされる。
じつは、WHOは2015年3月に砂糖の摂取量に関する新しいガイドラインを発表。現代人の「糖分の摂りすぎ」に警鐘を鳴らしていた。
それによると、それまで単糖(ブドウ糖、フルクトース)、二糖(ショ糖、砂糖)に該当する「遊離糖類」の摂取目標は、成人・小児が1日に摂取する総カロリーのうち10%未満としていたが、新ガイドラインでは「遊離糖類」の推奨摂取量をさらに少ない「1日5%未満」と、それまでの半分に控えるよう呼びかけていた(加工していない果物や牛乳に含まれる糖分は対象外)。
1日5%未満という摂取目標を砂糖に換算すると約25グラムで、小さじ6杯分に当たるという。たとえば、「コカ・コーラ」の糖分量は、100ミリリットルあたり11.3グラム含まれている(「炭水化物=糖質+食物繊維」の数値。コカ・コーラの「よくあるご質問」より)。
遊離糖類(糖分)は、ハチミツやシロップ、野菜ジュースなどにも含まれている。日ごろから何気なく食べたり飲んだりしていたら、瞬く間に摂取目標の分量を超えてしまうとうわけだ。
WHOでは、ケチャップ大さじ1杯の中には砂糖が4グラム含まれているなど、甘い食べ物に気をつけるだけでなく、加工食品に隠された糖類にも気をつけるよう、注意喚起している。
「糖尿病が減って医療費が減り、税収も増えるなら一石二鳥」
WHOによる糖分入りの清涼飲料水への課税の呼びかけに、インターネットでは、
「確かに課税しないと若者の砂糖の摂りすぎは是正されないやろな~」
「タバコみたいに『糖尿病や心筋梗塞の危険を高め、肥満の原因になります』ってボトルに書いたほうがいいかもな」
「これは、すごくナイスだと思う」
「糖尿病が減って医療費が減り、税収も増えるなら一石二鳥ですね」
と、賛成の声は少なくない。
その半面、反対の声も、
「適正に糖分を摂取している人にも課税することになるので反対」
「これだけ『ゼロカロリー』飲料が氾濫しているのに原因は糖質飲料だけではないだろう。他の食べ物についてはどうするつもり?」
「まあ、無理じゃね。米国のあの飲料メーカーが黙っちゃいないだろwww」
といった具合で、賛否両論が飛び交う。
最近は健康に気遣う消費者が増えており、清涼飲料水も「カロリーオフ」「ビタミンC入り」「カテキン入り」といった商品が増えている。インターネットにも指摘されているが、砂糖を使わず「ゼロカロリー」にしていても人工甘味料で甘さを感じることはできる。
ある清涼飲料メーカーは、「(仮に課税されたとしても)商品ラインナップが大きく変わることは考えられません。現在の清涼飲料水も残ると思いますよ」と話している。
一方、米大手飲料メーカーのペプシコが、消費者の健康志向の高まりや、米国内で糖分入り清涼飲料水に課税する動きが広がっていることに対応。世界各地で販売する商品に含まれる砂糖を大幅に減らすと、10月17日に発表した。