残業時間に一定の上限規制を設ける方針
ただ、「働き方会議」のメンバー23人のうち、8閣僚を除く15人を見ると、労働界からは神津里季生・連合会長だけで、榊原定征・経団連会長、三村明夫・日本商工会議所会頭、3企業幹部、経営コンサルタントなどがずらりと並び、「労使代表半々の労政審などと比べ、労働側の声はどこまで反映されるのか」(野党議員)との疑念も出ている。
また、個々の課題には、極めて高いハードルがある。同一労働同一賃金と長時間労働は、日本型雇用システムの中で、表裏一体の関係にある。終身雇用、年功序列賃金、新卒一括採用などの雇用慣行の下で、経営者は長時間の残業を厭わず、配置転換にも従う正社員を求め、正社員も雇用の安定と引き換えに長時間労働などを受け入れてきた。残業代が生活給化しているという現実もある。このあおりを受けて非正規社員の賃金が低水準に据え置かれてきたわけで、特に派遣など非正規雇用を利用しやすくする改革で、企業側は不況時に解雇しにくい正社員の採用を抑え、仕事が増えると残業時間を増やした、足りない分は非正社員を採用するという対応が当たり前になり、今や非正規雇用が4割を占めるまでになった。
こうした実態にどこまで改革の手を加えることができるのか。
具体的な改革メニューは、同一労働同一賃金の実現に向け、正社員の6割程度の非正規社員の賃金水準を8割程度に引き上げるため、パート労働法、労働契約法、労働者派遣法の3法を改正し、2019年度の施行を目指すほか、その前段として、「不合理な賃金格差」の事例を示すガイドラインを年内にも策定し、法改正までの間、各企業への自主的な努力を促す考えだ。
長時間労働の是正では、労使で協定(36協定)を結べば残業時間を事実上、無制限に延ばせることが男性の育児参加や女性の社会進出が進まない理由の一つとされることから、政府は残業時間に一定の上限規制を設ける方針だ。