東京五輪のボート・カヌー会場を巡る問題で、東京都の小池百合子都知事と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が都庁内で会談し、バッハ会長は、「五輪招致時のルールを変えないことが重要だ」と強調した。
ボート会場予定地になっている東京湾岸の「海の森水上競技場」は、五輪招致時から見積もり額がコロコロと変わった。
「われわれは、同じボートに乗っている」
招致時は50億円超だったのが、2013年には1000億円超となり、翌14年には都が再試算して500億円ほどになった。それでも高すぎると問題にした小池知事は、宮城県の長沼ボート場への移転などを検討している。ここなら、300億円超でできる試算だからだ。
ところが、報道によると、IOC側は、予定通り「海の森水上競技場」にしたい意向で、東京五輪調整委員長のコーツ副会長は、9月30日の都側とのテレビ会議で、選手村が分断されるなどとして突然の移転案に難色を示した。そして、朝日新聞(10月18日付朝刊)などの記事によると、10月17日になって、IOCは海の森がダメなら14年にアジア大会が開かれた韓国・忠州市のボート場での開催を検討していると関係者が明らかにした。
これに対し、ニュースのコメント欄などでは、もはや東京五輪でなくなるとして、大反発の声が上がっている。報道の真偽はよく分からないが、韓国開催案は会場移転に対するIOC側の脅しなのではないか、といった観測も流れていた。
IOCのバッハ会長は、10月18日の都庁会談で、「われわれは、同じボートに乗っていると考えています」とまず小池知事に話しかけた。
これに対し、小池知事は、移転検討などは8割の人が賛成していると理解を求め、「今月中に都としての結論を出したい」と見通しまで明らかにした。
小池都知事は、あくまで移転案も含めて検討
続いて、IOCのバッハ会長は、競技団体が「海の森水上競技場」を支持していることを念頭に置いてか、「すべての運営はアスリートが中心にあるべきだ」として、次のように語った。
「東京のプレゼンは素晴らしく、招致時のルールを変えないことが利益になる。言ったことを必ず実行してくれると信じている。大原則を守ることで、コストを見直しながら五輪を実行可能なものにすることができる」
バッハ会長は、そのうえで都、大会組織委員会、IOC、政府の4者による作業部会を作るべきだと提案した。小池知事は、これに同意し、「来月にでも作業部会を開けないか私からも提案したい」と述べ、バッハ会長は、「今月からでもいい」と応じた。
ボート会場を巡っては、10月18日になって、海の森の整備費は500億円から圧縮して300億円ほどにできると都が試算していると各紙に報じられた。宮城の長沼ボート場とほぼ同じ額だ。このことを念頭に置いているのかは分からないが、バッハ会長は、小池知事との会談で、「報道からしか情報はないが、大幅な経費削減ができると思う」と指摘していた。
小池知事は、会談後の囲み取材で、バッハ会長が招致時のルールを変えるべきでないと言っていた点を聞かれ、「いえ、都として会場をチェックして結論を出したい」と移転案も含めて検討したい考えを強調した。宮城の長沼ボート場は、県側から150~200億円で整備できるとの見通しも示されており、小池知事は今後、関係者の意向を汲みながら難しい舵取りを迫られそうだ。