大麻草の栽培と製品化の免許を取得し町興しに取り組んでいた鳥取県智頭町の会社代表(37)が、自宅に乾燥大麻88グラムを隠し持っていたとして大麻取締法違反の疑いで逮捕された。
「大麻」栽培業者が「大麻」所持容疑で逮捕、というニュースはネットでも注目を集め、「大麻」の栽培免許は、そんなに簡単に取れるものなのだろうか、といった声も出ている。
智頭町は全力で男の大麻栽培を応援していた
J-CASTニュースが2016年10月18日、厚生労働省・関東信越厚生局麻薬取締部に取材したところ、逮捕は10月4日で、自宅を捜査したところ大麻88グラムを所持しており、
「大麻は他人からもらって個人で使用していた」
と供述したという。この他に会社関係者2人も同容疑で逮捕されている。「八十八や」というのは、大麻を栽培し、それを製品化して販売している会社だ。製品は注連縄(しめなわ)に使う麻や、炭、味噌などがある。麻はもともとスーツやバッグなどの生地(布)の材料になり、実は食用になり油も取れる。かつては日本の生活に密接に関わっていた作物で、ピーク時は4万近い農家が栽培していたものの、1948年に制定された大麻取締法で栽培が禁じられ、現在は許可を得た数少ない農家が残るだけになった。
ではどうしてこの男が栽培の許可を得ることができたのか。マガジンハウスのウエブ版「コロカル」が14年9月2日に配信した記事にインタビューが掲載されている。もともと群馬県で麻の栽培をしていた場所で働いていたが、11年の東日本大震災をきっかけに子育てを目的に智頭町に移住した。畑で野菜を作り生活しようと考えたが、この地はもともと麻の産地で地元の麻栽培の経験者と触れ合うことでまた麻の仕事がしたくなった、という。男は町長に麻の栽培免許取得について相談し、町長は町をあげて男を応援することを決める。それは町興しにつながるからで、町全体を「森の博物館」にするプロジェクトが始まる。こうした大麻を使った取り組みは珍しいとして、NHKをはじめとするメディアの取材が増え紹介されていった。
男が免許を取得したのは13年。簡単に取れるものだろうか。J-CASTニュースが16年10月18日、この男に免許を与えた鳥取県の福祉保健部に取材したところ、極めて難しいという答えが返ってきた。現在、県内で免許を持っているのはこの男だけで、10年以上ぶりに与えたのだという。その理由として、
「町のバックアップにより地域興しと麻の伝統の復活をする、という趣旨があり、適性検査をしたところ問題ない、という判断になりました」
と説明した。