天皇陛下がビデオメッセージで退位の意向を強く示唆したことを受け、政府は有識者会議を設置して論点の整理を始めた。そんな中で、早くも具体的な退位の時期に踏み込んだ報道が相次いでいる。
政府が、退位や皇位継承に関する儀式の実施について「2018年(平成30年)」を視野に検討を始めた、というのだ。政府は現時点では報道を否定している。だが、仮に報道が事実だとすれば「平成」の元号が続くのはあと2年程度ということになり、情報システムや各種帳票の切り替えに向けた準備を急ぐ必要が出てきそうだ。
有識者会議では専門家へのヒヤリング項目決めたばかり
有識者会議は16年10月17日に初会合を開き、専門家に対して(1)天皇の役割(2)公務のあり方(3)負担軽減の方法(4)摂政設置の是非(5)国事行為委任の是非(6)退位の是非(7)退位できるようにする場合、今後の天皇にも適用できるようにすべきか(8)退位後の天皇の身分や活動はどうあるべきか、の8項目についてヒヤリングを行うことを決めた。有識者会議では、これらのヒヤリング結果をもとに提言をまとめるが、すでにいくつかの報道では具体的な退位の時期にまで踏み込んでいる。
天皇陛下が8月8日に発表したビデオメッセージは、
「戦後70年という大きな節目を過ぎ、2年後には、平成30年を迎えます」
という言葉で始まっている。この「平成30年」がひとつの「節目」だと理解されている可能性がありそうだ。
10月16日には、産経新聞(東京最終版)が朝刊1面トップで
「政府は、天皇陛下から皇太子さまへの皇位継承に伴う重要な儀礼である『大嘗祭(だいじょうさい)』を平成30年11月に執り行う方向で検討に入った」
と報じたのを皮切りに、10月18日には朝日新聞が
「政府は(20)18年をめどとする天皇退位を視野に入れはじめた」
と報じ、共同通信も
「政府が天皇陛下の生前退位について、2018年を想定して法整備を検討していることが分かった」
と続いた。
「昭和→平成」は「無難にこなした」が...
仮に「平成30年退位」が現実味を帯びるとすれば、情報システムなどは早急な対応を求められることになりそうだ。いわゆる「2000年問題」が顕在化した際、当時のメディアは
「われわれは積極的に対応してきた。昭和から平成へ年号が変わった際に、システム切り替えを無難にこなした実績もある」(1999年2月28日、読売新聞)
と報じている。1989年の「昭和→平成」の切り替えよりも対応すべきポイントは増えているとみられ、慎重な対応を求められることになりそうだ。
ただし、政府は現時点ではこういった報道を否定している。菅義偉官房長官は10月18日午前の記者会見で、「18年退位」説について
「政府がそうしたことを考えていることは、報道はあったが、まったくありません」
と述べ、天皇陛下が言及した「平成30年」の意味についても、
「政府としては、まさに今回の問題は、国の基本にかかわる重要な問題であり、そういう中ではじめに『スケジュールありき』とか、そういうことではなく、様々な専門的な知見を有する方のご意見をしっかりうかがいながら、まず静かに議論を進めていただきたいと思っているし、一定の方向性が示されれば、それを踏まえて政府としてはしっかり対応していきたい」
などと一般的な有識者会議の位置づけを繰り返すにとどめた。