会社ぐるみの「縁結び」にはドン引きも
なぜ、こうした反応になるのか――。
内閣府や地方自治体が力を入れているのは、職場での「おせっかいさん」(ボランティア)の育成だ。
先進的な事例の一つとして、先のフォーラムでも紹介されているのが福井県のケースで、「結婚応援企業」として協力企業を募っている。16年9月末時点で133社が登録。会社内に最低1人、「職場の縁結びさん」(おせっかい役)を置いてもらい、社内や企業間の「合コン」などの婚活パーティーやイベントを企画、開催するというもの。
福井県の担当者は、「『職場の縁結びさん』は上司や先輩にあたる人になります。県はそういった縁結びさんのサポート役で、縁結びさんを集めて情報交換や研修会、交流会を開くことで企業間の橋渡しをしています」と話す。
職場によって男性が多かったり、女性社員が多かったりするし、会社の規模や年齢構成によっても、なかなか「結婚」につながらないことは少なくない。「まずは若者にその気になってもらい、出会いの場を提供していくことからはじめてみました」という。
昭和の高度経済成長期~1980年代ごろまでは、職場結婚が多くを占めるなど、学校や会社で「自然な出会い」があったし、お見合い写真を手にした会社の上司や近所の世話好きな女性が年頃の男性や女性を見つけては結婚相手を紹介していた。
しかし、会社内での交流や飲み会が減ったこともあり、いまや、その「おせっかいさん」を国や地方自治体が旗振り役となって探し出して、育てようということらしい。
ただ、会社の関係者にプライバシーの根幹である結婚までまとめさせようというあり方は、実際に結婚を考えている若い人たちにとっては、「ドン引き」する中身にも映るようだ。
こうした反応に対して、内閣府は、「結婚という個人の問題を企業が支援することが難しいことは承知していますし、もちろん(結婚を)押しつけようということでもありません」と話したうえで、「ストップ少子化」のため、若者の新生活支援や住宅支援、長時間労働の是正など自治体や企業ができる支援策を考えていく必要があるとしている。
また、福井県も「パワハラやセクハラと受けとめられかねないようにしていくには、ふだんのコミュニケーションが大事になってきます。その半面、変に遠慮しても前進しないと思うので、その点では『縁結びさん』に上手に入っていただけたらと思っていますし、期待したいところです」と話している。