恐怖の「スキルス胃がん」治療に光 大阪市大、増殖・転移を抑える方法発見

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   進行が速くて治りにくいことで知られる「スキルス胃がん」の症状を進ませる原因となるタンパク質を、大阪市立大学の八代正和准教授のチームが世界で初めて突きとめた。新たな治療薬の開発につながる画期的な発見だという。

   研究成果は米国の病理学会誌「American Journal of Pathology」(電子版)の2016年10月11日号に発表された。

  • スキルス胃がんから生還した宮迫博之さん(2015年6月撮影)
    スキルス胃がんから生還した宮迫博之さん(2015年6月撮影)
  • スキルス胃がんから生還した宮迫博之さん(2015年6月撮影)

黒木奈々さんと宮迫博之さんの明暗を分けた偶然

   多くの胃がんは胃の粘膜の上にできるため内視鏡などで検査すれば早期発見しやすい。しかし、スキルス胃がんは、胃壁の粘膜の下に隠れるように広がるため、早期発見が難しい。しかも進行が非常に速く転移しやすい。胃がん全体の約10%を占め、年間数千人が発症し、30~50代の女性に多い。死亡率が非常に高く、5年生存率は約20%だ。

   2015年9月19日にフリーアナウンサーの黒木奈々さん(享年32)がスキルス胃がんで亡くなり、世間の話題になった。黒木さんは闘病生活の中で著書『未来のことは未来の私にまかせよう』を発表、この病気の恐ろしさと早期発見の重要性を社会に訴えた。一方、お笑い芸人の宮迫博之さん(46)は2012年にスキルス胃がんを発症したが早期手術で助かった。たまたま知り合った人物が人間ドック院長で、「遊びがてら検査においで」と誘われため、「思いつき検診」を受けたことが命拾いになった、とテレビなどで告白した。

悪役タンパク質コンビががん細胞増殖に暗躍

   大阪市立大学の2016年10月11日付発表資料によると、研究チームは人間のスキルス胃がんの細胞をマウスの胃に移植し観察した。すると、スキルス胃がん細胞が作り出す「CXCL1」というタンパク質が、正常な骨髄細胞をがん組織の中に誘導し増殖に利用していることを発見した。CXCL1は骨髄細胞の表面にある「CXCR2」という別のタンパク質にシグナルを送って骨髄細胞を集め、がん細胞化させていた。

   そこで、スキルス胃がんを発症したマウスを2つのグループに分け、一方のグループにCXCR2の働きを妨げる化合物を注射して経過を観察すると、注射しなかったグループよりも、がんの増殖や転移が抑えられ、生存率が高くなった。

   研究チームによると、すい臓がんなど他の治療が難しいがんも、同様の仕組みでこの2つのタンパク質ががん細胞の増殖に関係しているとみられ、CXCR2の働きを阻害する新たな治療薬の開発が期待されるという。八代准教授は記者会見で「製薬会社と連携し、できるだけ早く臨床試験を始めたい」と語った。

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