「分煙」実質的に効果なし?
たしかに、日本の受動喫煙対策は先進国と比べて「遅れている」との指摘がある。
厚労省が2016年9月2日に公表した「喫煙の健康影響に関する報告書(たばこ白書)」によると、世界保健機構(WHO)の評価基準では、日本は受動喫煙防止策、脱たばこ・メディアキャンペーン、たばこの広告・販売・後援の禁止の項目において「最低」レベル。さらに、医療や教育施設、大学、官公庁、一般の職場、レストラン、カフェや居酒屋、公共交通機関の8つの場所のすべてで、日本は全面禁煙になっておらず、「最低」と酷評された。
たばこ白書は15年ぶりの改訂で、今回初めて喫煙と病気の因果関係を4段階で評価したところ、がんのほか、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病などで因果関係が「確実」であることがわかった。受動喫煙が原因で死亡する人は、国内で年間約1万5000人に達するという。
日本は2003年5月から健康増進法(受動喫煙防止法)が施行されているが、屋内禁煙については「努力義務」にとどまる。
そのため、「分煙」を取り入れ、屋内の一部に「喫煙室」を設置する飲食店などが多いが、店内に衝立ても置かずに喫煙場所を設けたり、店内の一角に「喫煙室」を設けたりしたものの、その喫煙室が完全に遮断されていないために、流れ出る煙による受動喫煙が避けらないケースも少なくない。つまり、実質的にまったく分煙できていないケースがあるわけだ。
こうしたことから、厚労省はたばこ白書でも屋内の全面禁煙などの対策の必要性を訴えている。
一方、日本たばこ産業(JT)の「全国たばこ喫煙者率調査 2016年」(5月調査。対象は全国20歳以上の男女約3万2000人。有効回答率61.2%)によると、男女を合わせた喫煙者率は前年に比べて0.6ポイント減の19.3%となり、過去最低を更新。女性の喫煙者は微増したが、男性の喫煙率は29.7%で1965年の調査開始以来、初めて3割を切った。
健康意識の高まりや高齢化の進展、価格の値上げなどの影響で、たばこを吸う人が減っていることは間違いないようだ。