作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(94)が死刑廃止を訴える中で「殺したがるばかどもと戦って」などとするビデオメッセージを寄せ、批判が相次いだ問題で、瀬戸内さんは新聞の連載コラムの中で「お心を傷つけた方々には、心底お詫びします」などと陳謝した。
その中で「発言の流れからしても『バカども』は当然、被害者のことではないと聞けるはずである」ともつづっており、炎上は全く想定外だったようだ。
「老体に似合わぬみっともない舌禍事件」
瀬戸内さんの連載コラム「寂聴 残された日々」は2016年10月14日に朝日新聞に掲載された。「バカは私」のタイトルが付けられ、その中で瀬戸内さんは「老体に似合わぬみっともない舌禍事件」を起こしてしまったとして、問題だとされた「殺したがるばかども」という表現について、
「今もなお死刑制度を続けている国家や、現政府に対してのものだった」
と説明。表現そのものは
「94歳の作家で老尼の口にする言葉ではないと、深く反省している」
としながらも、
「発言の流れからしても『バカども』は当然、被害者のことではないと聞けるはずである。でなければ、言葉に敏感な弁護士たちが、そのまま流すはずはないだろう。これまでも私は文学者としても出家者としても被害者のために論じ、行動してきている。過去の私の言行を調べてくれればわかるはずである」
と、炎上は予想外だったとの見方を示した。炎上騒動を聞かされた時には
「もの言えば唇寒し秋の風」
「だから長生きは厭(いや)なんだ」
という2つの言葉が思い浮かんだというが、結論として、
「そんな誤解を招く言葉を94歳にもなった作家で出家者の身で、口にする大バカ者こそ、さっさと死ねばいいのである。耄碌のせいだなどと私は逃げない。お心を傷つけた方々には、心底お詫びします」
と謝罪。最後は「恨みをもって恨みに報いれば永遠に恨み尽きることなし」という釈迦の言葉で結んでいる。